- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 105. 英語リスニング脳 悩み解決
公開日
2025.04.02
更新日
2025.04.02

スラッシュリーディングは英語リスニングにどう役立つのか? スラッシュ英文音読のやり方次第で英語リスニングに非常に効果があります。
効率よく長文英語読解をするためにスラッシュリーディングという読解法があります。
このスラッシュリーディングを英語リスニング力の向上のためにどう活用できるのか解説します。
スラッシュリーディングとは
英文読解の方法論の1つにスラッシュリーディングというものがあります。
1文の英文における意味の塊(cunk:チャンク)ごとに ”/”(スラッシュ)を入れて、英文の意味を理解しやすくします。
下記の英文を例にしてスラッシュリーディングを説明したいと思います。
Last year, many people across the world looked to their gardens to find enjoyment and peace during the coronavirus pandemic.
訳は「昨年、世界中の多くの人々が、コロナウイルスのパンデミックの間に、楽しみと平和を見つけるために彼らの庭に目を向けました」です。
スラッシュの入れ方に厳密な規則はなく、英文を読み慣れている人であれば、かなり大括りな意味の塊(チャンク)で区切ってもよく、英文を細かく分析したいときなどは細かくチャンクを区切っても構いません。
以下は大括りなチャンクに区切った文例です。
Last year, / many people across the world / looked to their gardens to find enjoyment and peace / during the coronavirus pandemic.
3か所にスラッシュを入れて、4つのチャンクとしました。
この場合のスラッシュでの区切りに考え方は以下の通りです。
Last year, :去年
⇒カンマで区切ってあることもあり、時期を示すチャンク
many people across the world :世界中の多くの人々が
⇒主語関連のチャンク
looked to their gardens to find enjoyment and peace:楽しみと平和を見つけるために彼らの庭に目を向けました
⇒動詞とそれに付随する説明語関連のチャンク
during the coronavirus pandemic.:コロナウイルスのパンデミックの間に
⇒説明語数が多いので、時期を説明するチャンクを区切った。
このようにスラッシュを入れていくつかのチャンクに分けると、英語の語順のままで英文の意味が理解しやすくなります。
このスラッシュの入れ方に規則はありませんが、英語ネイティブスピーカーと日本人英語学習者の違いが大きく出るものもあります。
I do not think that he is a good teacher. (彼が良い先生だとは私は思わない)
日本人がこれにスラッシュを入れて2つのチャンクに分けるとすると、多くの人が下記のようにスラッシュを入れると思います。
I do not think that / he is a good teacher.
日本人の英語学習者は、“I do not think that~”という形で英語表現として覚えることが多いので、“that” の直後にスラッシュを入れて、発音もそこで若干の区切りを入れる人が多いと思います。
これに対して、英米人がこの英文にスラッシュを入れて2つのチャンクに分けるとすると、かなりの人が下記のようにスラッシュを入れると思います。
I do not think / that he is a good teacher.
英米人は、”that~” が “think” の目的語という意識なので、“think” の直後にスラッシュを入れて、発音もそこで若干の区切りを入れる人が多いのです。
もう1つ、スラッシュの入れ方について例文を見てみたいと思います。
Steve has been to China as well as you have.
訳は「ステーブはあなたと同じくらい中国に行ったことがある」です。
多くの日本人の英語学習者は以下のようにスラッシュを入れると思います。
Steve has been to China / as well as you have.
受験英語学習で “as well as” は「~と同じくらい」を意味する表現と学習するからです。
これに対して、多くの英米人は次のようにスラッシュを入れると思います。
Steve has been to China as well / as you have.
2つ目の “as” が接続詞という意識のためで、ゆっくりとクリアに発音するときは、“well” と 2つ目の“as” の間に区切りを入れる英米人が多いと思われます。
これらの課題は、日本の英語教育での英文法や英熟語の学習の仕方に原因があると思われます。
この違いがあると、英米人は日本人学習者の発声リズムに時に若干の違和感を覚えると思います。
ただ、この課題は、日本人英語学習者にとって長年の英文法や英熟語の記憶の仕方に起因していて、簡単に修正できるものでもないので、英米人の英語音声を聞いたときに、自分の発声する際の間合いの取り方(スラッシュの入れ方)と違いがあるとき、英語ネイティブスピーカーの発声の間合いの取り方をよく聞いて、1つずつ修正していけば良いと思います。

スラッシュリーディングのメリット
スラッシュリーディングのメリットを理解するために、先ほどの英文を細かいチャンクを意識してスラッシュで区切ってみました。
Last year, / many people / across the world / looked / to their gardens / to find enjoyment and peace / during the coronavirus pandemic.
Last year, :去年
many people :多くの人々は
across the world :世界中の
looked :見た
to their gardens :彼らの庭を
to find enjoyment and peace :見つける 楽しみ と 平和を
during the coronavirus pandemic. :間 新型コロナの パンデミックの
限られた時間で長文の英語読解をしなければいけない時に、英文和訳の時のように英文を返り読みすると、時間が足りなくなってしまいます。
そこでこのようなスラッシュリーディングでチャンクの語順ごとに意味をとることによって短時間で英文の意味を把握することができます。
英語を英語のまま理解できることが理想ではありますが、英語の長文読解テストや英語リスニングテストで得点を上げたいと考えるならば、必死で母国語である日本語に置き換えて何とか英文の意味を把握すると言うのは当然であり、仕方ないと思います。
そして、スラッシュリーディングは英文の意味を語順のまま理解する手段として優れていると思います。

英語リスニング学習にとってのスラッシュリーディング
英文音読学習は、英語リスニング力を向上させるのに有効だと勧められてトライした方も多いと思います。
そして多くの人は止めてしまっていると思います。
その理由は簡単で、英文音読に労力と時間をかけても期待したほど英語リスニング力が向上しないからです。
なぜ、英文音読をしても英語リスニング力が思ったほど伸びないのでしょうか?
それは日本語発声特性で英文音読をしてしまうからです。
日本語発声特性で英文音読をいくらしても英語リスニング脳を構築することはできません。
英語聴覚脳を構築するには、英語発声特性を十分発揮して、英文音読をすることが必須です。
したがって、ただ漫然と日本語発声特性のまま、英文音読をしても時間と労力の無駄です。
逆に、英語発声特性を十分に加味して、英文音読学習に取り組むならば、英語リスニング力の向上がかなり期待できます。
英文音読はこのような条件のもと、英語リスニング力の向上に効果を発揮しますが、英文音読の際、スラッシュリーディングの手法を用いて、発声の間合いの取り方を英語音声に合わせつつ、かつ英文の意味もきちんと聞きとると言うことで非常に効果を発揮すると考えられます。
先ほどの英文で音読のポイントを解説したいと思います。
Last year, :去年
⇒Last: “s” は ”su” ではなく、母音を入れない “s”で発音
⇒高速音読の時のみ ” Last” と ” year” の “ty” がリンキングで “ti” と発音
⇒year:”r” をキチンと発音する。
many people :多くの人々は
⇒people:“p” は ”pu” ではなく、母音を入れない “p”で発音
⇒people:“l” は ”lu” ではなく、母音を入れない “l”で発音
across the world :世界中の
⇒across:“c” は ”cu” ではなく、母音を入れない “c”で発音
⇒across:“s” は ”su”ではなく、母音を入れない “s”で発音
⇒the:”th” を “za” でなく、 ”th” できちんと発音する。
⇒world:”r” をキチンと発音する。
⇒world:“l” は ”lu” ではなく、母音を入れない “l”で発音
⇒world:“d” は ”do” ではなく、母音を入れない “d”で発音
looked :見た
⇒“k” は ”ku” ではなく、母音を入れない “k”で発音
to their gardens :彼らの庭を
⇒their:”th” を “ze” でなく、 ”th” できちんと発音する。
⇒their:”r” をキチンと発音する。
⇒gardens:”r” をキチンと発音する。
to find enjoyment and peace :見つける 楽しみ と 平和を
⇒find:”f” を “h” でなく、”f” できちんと発音する。
⇒高速音読の時のみ ”find” と ”enjoyment” の “de” をリンキングで発音
⇒高速音読の時のみ ”enjoyment” と ”and ” の “ta” をリンキングで発音
during the coronavirus pandemic. :間 新型コロナ パンデミック
⇒during:“g” は ”gu” ではなく、母音を入れない “g”で発音
⇒the:”th” を “za” でなく、 ”th” できちんと発音する。
⇒coronavirus:”v” を “b” でなく、 ”v” できちんと発音する。
かなり細かいと感じられたかと思いますが、英語ネイティブスピーカーはアルファベット1文字1文字をかなりきちんと発音すると言う意識があり、これくらいは気を配って英語音読トレーニングを積む必要があります。
また、これに関して「そんなことわかっているよ、ちゃんとやっているよ」と思われた人も多いと思います。
しかし、英米人との英会話で何をどう表現したらよいかで必死なときに、きちんとアルファベット1文字1文字に気を配って発音できているかというと現実的には結構厳しいものがあります。
この種の事は日頃から短時間で良いので、きちんと毎日継続的に英文音読トレーニングを積んで無意識でもできるようにしておくことが重要です。
英音研学習サイトでは、デイリープラクティスと称して1日15分ほどでこれらのことを復習できるトレーニング教材を提供していますので、ぜひアクセスしてみてください。
これにより、英語リスニング力はもとより、英語スピーキング力も向上します。

英語文なし英語音声のみの場合の英語リスニング
スラッシュを入れた英語文がなく、英語音声のみ場合の英語リスニングはどのようになるのでしょうか?
英語リスニング学習手法として、スラッシュリスニングを提唱している場合があります。
スラッシュリスニングとは、英語文のスラッシュリーディングのリスニング版で、英語音声のチャンクごとに意味を聞き取っていきましょうという考え方です。
英語文だと、数個の英単語を一度に見ることができ、どこまでがチャンクなのかも判断はそれほど難しくありません。
しかし、英語音声は発せられると同時どんどん消えていくので、どこからどこまでがチャンクなのかを瞬時に判断するのはかなり難しいものがあります。
英語発声特性を使った英語音読トレーニングを積むと、英語音声における英単語1つ1つの音声キャッチ力が高まり、左から右へどんどん流れて行って意味を取っていくと言う感覚です。
その中で主語と動詞は若干意識し、あとの単語は全部主語と動詞の説明語という感覚です。
途中で接続詞や関係代名詞が出てくると、そこに切れ目があるというのを感じるという感覚もあります。
チャンクごとに英語音声の意味を聞き取るという感覚はありません。
ですので、スラッシュリーディングは、英音発声特性を加味した英文音読トレーニングに活用し、それで英語リスニング力を向上させ、英文なしの英語音声の聞き取りは普通に発声される語順の通りに英単語を聞き取って意味を理解すると言う感じになると思います。

まとめ
スラッシュリーディングは、英文読解のスピードが向上するのみならず、語順通りに意味を聞き取る必要がある英語リスニング力の向上にも非常に役立ちます。
その際、スラッシュ英語音読をする場合は、英語発声特性を加味することにより、英語リスニング脳が構築でき、英語リスニング力が向上します。
漫然と日本語発声特性のまま、英文音読をしても、英語リスニング脳は構築できず、英語リスニング力は向上しません。
英音研では公式WebサイトのブログでVOAの英文をサンプルにとり、語順通りに英文を理解するためのスラッシュリーディングの教材と、チャンクごとに発声方法のポイントを解説した教材を投稿しています。
英語リスニング力は、理屈を理解するだけでは向上せず、英語発声特性を加味しつつ、繰り返しスラッシュ英文音読トレーニングを積むことで向上します。
英語発声特性の説明については、英音研学習サイトに詳細かつ具体的に説明し、トレーニング教材も提供していますので、ぜひ英音研Webサイトにアクセスして頂ければと思います。
以下の記事もご覧ください。
【スラッシュ英文音読】NASA Explorer Successfully Lands on Mars(1)
https://www.eionken.co.jp/note/nasa-explorer-successfully-lands-on-mars-1/
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著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英音研株式会社創業者・代表取締役
・米国系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループ(BCG東京オフィス)及びNTTデータ経営研究所において通算30年超のビジネスコンサルティング歴を持つ。BCGでは日本のみならず、米国・欧州企業向けに経営戦略、マーケティング戦略、業務改革(BPR)、新規事業や新サービス開発プロジェクト、ソーシャルメディアマーケティングなどを多数経験。NTTデータ経営研究所においては、グローバルビジネス推進センターのエクゼクティブコンサルタントとして、米国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、バングラデシュ、UAE、サウジアラビアなどにおける市場調査・輸出拡大戦略立案などに従事。
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語スピーキング脳を構築する効果的な学習方法も考案、英音研公式ブログに学習方法を投稿。
・趣味は米国の映画・ドラマを視聴して、米国人の価値観、文化、風習などを感じ取ること
・最近は、長年疑問に思っていたことや知りたいと思っていたことを生成AIに質問して、回答を読んで納得したりしている。これからの時代は膨大な知識データベースでもある生成AIへの質問力がポイントになると考えている。
・晴れていると、近くの小さな川沿いをウォーキングして、季節の移ろいを感じている。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など8冊がある。
Amazon.co.jp: 英音研株式会社: 本、バイオグラフィー、最新アップデート
・「シニアになって米国オンライン教育を受講してみた」シリーズとして9冊の書籍を発刊
「シニアになって米国の子供向け英語フォニックスのオンライン教育を受講してみた」
「シニアになって米国高校生向け米国史オンライン教育を受講してみた」
「シニアになって米国高校生向け化学オンライン教育を受講してみた」など
・ビジネスコンサルティング技術関連の著書に「ビジネスコンサルティング技術・マインド体系」「新規事業アイデア創造の技術」「ビジネスレポートを書く技術」「ビジネスプレゼンテーションの技術」など14冊がある。
Amazon.co.jp: 山下長幸: 本、バイオグラフィー、最新アップデート
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