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公開日
2025.09.05
更新日
2025.09.05

心に響く英語ことわざ(634)交流電流などで有名な米国の発明家ニコラ・テスラの名言 The scientists of today think deeply instead of clearly…(木を見て森を見ず)
“The scientists of today think deeply instead of clearly. One must be sane to think clearly, but one can think deeply and be quite insane.”
直訳は「今日の科学者たちは、明晰に考える代わりに深く考える。明晰に考えるには正気でなければならないが、深く考えることは正気を失っていてもできる」で、似た意味のことわざに「考えるな、感じろ」があります。
ニコラ・テスラ(Nikola Tesla)の名言 The scientists of today think deeply…の意味
この言葉は、セルビア系アメリカ人の発明家、電気技師、物理学者であるニコラ・テスラが、「思考の本質」について述べたものです。彼は、科学的な探求において、「深く考えること(deeply)」と、「明晰に考えること(clearly)」は全く異なるものであり、後者こそが真の進歩をもたらすと説いています。
この言葉が意味すること
この名言は、「思考の量よりも、思考の質」が重要であるという哲学を強調しています。
- 「The scientists of today think deeply instead of clearly.」(今日の科学者たちは、明晰に考える代わりに深く考える。) テスラは、この言葉で、当時の科学者たちが、複雑な理論や仮説を延々と構築することに満足し、その思考が「明晰」であるかどうかを顧みない傾向にあることを批判しています。彼は、深遠な思考が、必ずしも真理につながるとは限らないと考えていました。
- 「One must be sane to think clearly, but one can think deeply and be quite insane.」(明晰に考えるには正気でなければならないが、深く考えることは正気を失っていてもできる。) この部分が、この言葉の核心です。
- 「明晰に考えること」:テスラは、これを、論理的で、客観的で、そして合理的な思考と捉えています。彼は、この種の思考には、「正気」(sane)な精神が必要だと述べています。
- 「深く考えること」:一方で、彼は、これを、複雑で、非現実的で、時には狂気じみた思考と捉えています。彼は、この種の思考は、「正気を失っていても」(insane)できると皮肉を込めて言っています。
似た意味の英語のことわざ
- “Simplicity is the ultimate sophistication.” (シンプルさは究極の洗練である。) これは、レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉とされており、複雑さよりも、シンプルさや明快さの価値を強調しています。
- “Less is more.” (少ない方が豊かである。) これは、不必要なものを排除することで、より本質的で豊かな生活が送れるという意味で、テスラの「明晰な思考」に通じます。
- “Common sense is not so common.” (常識は、それほど常識ではない。) これは、多くの人が当たり前だと思っていることが、実際にはそうではないという皮肉であり、テスラの「深く考える」ことが、必ずしも真理につながるとは限らないという考え方と通じます。
似た意味の日本語のことわざ
- 「考えるな、感じろ」 ブルース・リーの言葉として知られるこの言葉は、論理的な思考に囚われず、直感や感覚を信じることの重要性を説いています。テスラの言葉は、この「感じる」という部分を「明晰な思考」という言葉で表現しています。
- 「深謀遠慮」(しんぼうえんりょ) 深く考え、遠い将来のことまで見通して計画を立てるという意味。テスラの言葉は、この「深く考える」ことの危険性も示唆しています。
- 「木を見て森を見ず」 目の前の細部に囚われて、全体像を見失ってしまうという意味。テスラの「深く考える」ことは、この状態に陥る可能性があることを示唆しています。
ニコラ・テスラ(Nikola Tesla)の波乱万丈な生い立ち
ニコラ・テスラ(1856-1943)は、クロアチアで生まれたセルビア系アメリカ人の発明家、電気技師、物理学者であり、交流電流(AC)に関する研究で知られています。彼は、トーマス・エジソンと並ぶ、電気時代の偉大な先駆者の一人です。
幼少期と天才の誕生
1856年、現在のクロアチアで、正教会の司祭の家庭に生まれました。彼は、幼い頃から驚異的な記憶力と、数学や物理学の才能を発揮しました。彼は、頭の中で実験をシミュレーションする「イメージング」という能力を持っていました。
エジソンとの対立
彼は、20代でアメリカへ渡り、トーマス・エジソンの会社で働き始めました。テスラは、エジソンが主張する直流電流(DC)よりも、交流電流(AC)の方が、電気の長距離送電に適していると確信し、エジソンと激しく対立しました。 この対立は「電流戦争」と呼ばれ、最終的には、テスラの交流電流が勝利し、現代の電力システムの基礎となりました。
晩年と遺産
テスラは、無線通信、リモコン、X線など、多くの革新的な発明を行いました。しかし、彼は、ビジネスや特許の申請には無関心で、多くの発明が他の科学者に盗まれたり、評価されなかったりしました。 彼は、晩年、孤独な生活を送り、精神的に不安定になりました。1943年、86歳でニューヨークのホテルで亡くなりました。 ニコラ・テスラの生涯は、天才的な発想と、世俗的な成功への無関心という、相反する二つの側面を持つものでした。彼の言葉は、私たちに、思考の深さよりも、その思考がどれだけ現実的で、明晰であるかが重要であるという、深い教訓を与え続けています。
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心に響く英語ことわざ(633)フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトの名言 Great ambition is the passion of a great character…(諸刃の剣)
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心に響く英語ことわざ(635)アイルランドの唯美主義劇作家オスカー・ワイルドの名言 The truth is rarely pure and never simple.(真実は複雑)
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著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。
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