- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 204.心に響く英語ことわざ2
公開日
2025.09.16
更新日
2025.09.16

心に響く英語ことわざ(688)「純粋理性批判で有名なドイツの哲学者イマヌエル・カントの名言 Seek not the favor of the multitude; it is seldom got by honest and lawful means. But seek the testimony of few; and number not voices, but weigh them.(少数の思慮深い人々の意見にこそ価値がある)
“Seek not the favor of the multitude; it is seldom got by honest and lawful means. But seek the testimony of few; and number not voices, but weigh them.”
直訳は「大衆の支持を求めるな。それは正直で合法的な手段ではめったに得られない。しかし、少数の証言を求めよ。そして声の数を数えるのではなく、その重さを量れ」で、これは、真実や正義が、必ずしも多数決によって決まるものではなく、少数の思慮深い人々の意見にこそ価値があるという、カントの深い洞察を表現しています。
イマヌエル・カント(Immanuel Kant)の名言 Seek not the favor…の意味
この言葉は、ドイツの哲学者であるイマヌエル・カントが、「真理と大衆の意見」について述べたものです。彼は、大衆の支持(favor of the multitude)が、往々にして、感情や偏見に基づいているため、それに安易に迎合すべきではないと警告しています。代わりに、少数の、本質を見抜く人々の意見に耳を傾けるべきだと説いています。
この言葉が意味すること
この名言は、「質の重要性」を強調しています。
- 「Seek not the favor of the multitude; it is seldom got by honest and lawful means.」(大衆の支持を求めるな。それは正直で合法的な手段ではめったに得られない。) カントは、この言葉で、「ポピュリズム」の危険性を示唆しています。彼は、大衆の支持を得るためには、しばしば、真実を曲げたり、不誠実な手段に訴えたりする必要があると警告しています。彼は、このような行為が、その人の道徳的な価値を損なうと考えていました。
- 「But seek the testimony of few; and number not voices, but weigh them.」(しかし、少数の証言を求めよ。そして声の数を数えるのではなく、その重さを量れ) この部分が、この言葉の核心です。カントは、「量(number)」ではなく、「質(weigh)」に焦点を当てるように促しています。彼は、少数の人々、特に、真理や正義を深く理解している人々の意見が、大多数の意見よりも、はるかに大きな価値を持つと考えていました。
似た意味の英語のことわざ
- “The greatest good is the knowledge of oneself.” (最大の善は、自己を知ることである。) これはソクラテスの言葉で、カントの言葉が持つ、「内面的な真理を探求する」という精神と通じます。
- “Where there is a will, there is a way.” (意志あるところに道は開ける。) これは、強い意志や決意があれば、必ず成功への道が見つかるという意味で、その意志は、少数の声に耳を傾けることによって、より強固なものになります。
- “A journey of a thousand miles begins with a single step.” (千里の道も一歩から。) これは、どんなに大きな目標でも、最初の一歩から始まるという意味で、その一歩は、真理を追求する姿勢から生まれます。
似た意味の日本語のことわざ
- 「人間万事塞翁が馬」(にんげんばんじさいおうがうま) 人生の幸不幸は予測できないという意味で、カントの言葉とは直接的な関連性はありません。
- 「蓼食う虫も好き好き」(たでくうむしもすきずき) 人の好みは様々であるという意味で、カントの言葉とは直接的な関連性はありません。
- 「口は災いの元」(くちはわざわいのもと) 不用意な発言や嘘が、身の破滅を招く原因となるという意味。
イマヌエル・カント(Immanuel Kant)の波乱万丈な生い立ち
イマヌエル・カント(1724-1804)は、ドイツの哲学者であり、「批判哲学」という、近代哲学の基礎を築きました。彼は、倫理学、美学、そして認識論といった、多岐にわたる分野で、後世に大きな影響を与えました。
幼少期と哲学への道
1724年、プロイセン王国(現在のロシアのカリーニングラード)の敬虔な家庭に生まれました。彼は、生涯を通じて、故郷のケーニヒスベルク(現カリーニングラード)を離れることなく、学問に専念しました。 彼は、ケーニヒスベルク大学で、数学、物理学、そして哲学を学び、その後、同大学の教授となりました。
批判哲学の確立と晩年
カントは、それまでの哲学が、「経験論」と「合理論」という、二つの対立する流れに分かれていたのに対し、両者を統合する「批判哲学」を提唱しました。彼の著作『純粋理性批判』は、哲学の歴史を大きく変えました。 彼は、晩年、『実践理性批判』や『判断力批判』といった、倫理学や美学に関する著作を発表し、「人間は目的として扱われるべきであり、手段として扱われるべきではない」といった、今日でも広く知られている哲学的な概念を提示しました。 彼は、1804年に79歳で亡くなりました。 イマヌエル・カントの生涯は、真理を探求し、そして、その思想を、著作という形で、後世に残した物語です。彼の言葉は、私たちに、多数の意見に惑わされることなく、真理と向き合うことの重要性を教えてくれます。
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心に響く英語ことわざ(687)古代ギリシアの哲学者ヘラクレイトスの名言 The way up and the way down are one and the same.(人生の成功と失敗は一つの道の上にある)
https://www.eionken.co.jp/note/the-way-up-and-the-way-down/
心に響く英語ことわざ(689)「若きウェルテルの悩み」で有名なドイツの文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの名言 I love those who yearn for the impossible.(不可能への挑戦)
https://www.eionken.co.jp/note/i-love-those-who-yearn/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。
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