- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 204.心に響く英語ことわざ2
公開日
2025.10.02
更新日
2025.10.03

心に響く英語ことわざ(738)近代科学の祖イギリスの哲学者フランシス・ベーコンの名言 By indignities men come to dignities.(成功は苦難の先にこそある)
“By indignities men come to dignities.”
直訳は「屈辱によって、人は尊厳にたどり着く」で、これは、「成功」や「名誉」といった「尊厳(dignities)」は、楽な道を通って得られるものではなく、「屈辱(indignities)」や「苦難」といった試練を耐え忍ぶことによって、初めて獲得されるという、フランシス・ベーコンの深い洞察を表現しています。
フランシス・ベーコン(Francis Bacon)の名言 By indignities men come to dignities.の意味
この言葉は、イギリスの哲学者、科学者、そして政治家であるフランシス・ベーコンが、「成功の真の代償」について述べたものです。彼は、世間が称賛する「尊厳ある地位や名声」の背後には、他者からの軽蔑、不正な扱い、あるいは自己の過ちといった、「屈辱」の経験が必ず存在すると説いています。
この言葉が意味すること
この名言は、「苦難の意義」を強調しています。
- 「By indignities men come to dignities.」(屈辱によって、人は尊厳にたどり着く。) ベーコンは、この言葉で、成功への道が直線的ではないことを示しています。彼は、「屈辱」を、単なる不幸としてではなく、「尊厳」へと至るための「手段(By)」として捉えています。この「屈辱」は、忍耐、謙虚さ、自己反省、そして決意を学ぶための鍛錬の場となるのです。
- 「屈辱」の持つ二重の意味:
- 外部からの不当な扱いや軽蔑: 政治家としてのベーコン自身も経験したように、成功者がそのキャリアの過程で直面する、他者からの嫉妬や中傷。
- 自己の過ちや失敗: 偉大な人物でさえ犯す失敗や、そこから生じる恥辱。この経験こそが、人格を深め、最終的な成功へと導く真の知恵を与えるという教訓です。
似た意味の英語のことわざ
- “That which does not kill us makes us stronger.” (私たちを殺さないものは、私たちをより強くする。) これはフリードリヒ・ニーチェの名言で、苦難が成長の源であるという点でベーコンの思想と通じます。
- “Where there is a will, there is a way.” (意志あるところに道は開ける。) これは、強い意志や決意があれば、必ず成功への道が見つかるという意味で、その道は、屈辱に耐える意志から開かれます。
- “A journey of a thousand miles begins with a single step.” (千里の道も一歩から。) これは、どんなに大きな目標でも、最初の一歩から始まるという意味で、その一歩は、屈辱を受け入れるという小さな行動かもしれません。
似た意味の日本語のことわざ
- 「艱難汝を玉にす」(かんなんなんをたまにす) 苦労や困難が、人を磨き、立派な人物に成長させるという意味。ベーコンの思想を最も的確に表す日本語です。
- 「為すべきを為す」(なすべきをなす) 目先の利益や欲望を気にせず、自分がすべきだと信じる正しいことを行う、という意味。
フランシス・ベーコン(Francis Bacon)の波乱万丈な生い立ち
フランシス・ベーコン(1561-1626)は、イギリスの哲学者、科学者、そして政治家です。彼は、「経験論」の父と呼ばれ、科学的方法(帰納法)の基礎を築いたことで知られています。
幼少期と政治家への道
1561年、ロンドンで、エリザベス女王の廷臣であった裕福な家庭に生まれました。彼は、その後、ケンブリッジ大学で法律を学び、弁護士として活動を始めました。 彼は、その後、政治家として頭角を現し、最終的には、大法官という、イギリスの司法における最高位の職にまで昇りつめました。
科学的方法の確立と失脚
ベーコンは、その政治活動の傍ら、哲学と科学の研究にも没頭しました。彼は、『新機関(Novum Organum)』という、有名な著作で、科学的方法の重要性を説きました。 しかし、彼は、その政治キャリアの頂点で、賄賂の罪で告発され、失脚するという、「屈辱」を経験しました。
晩年と遺産
ベーコンは、その失脚後、政治活動から身を引き、研究と執筆に専念しました。彼は、その後、『学問の進歩』といった、多くの著作を執筆しました。 彼は、1626年に65歳で亡くなりました。 フランシス・ベーコンの生涯は、一人の人間が、その才能と、飽くなき探求心によって、いかに科学と、世界を豊かにすることができるかを示す物語です。彼の言葉は、彼自身の屈辱の経験から生まれた、成功は苦難の先にこそあるという、深い教訓を与え続けています。
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心に響く英語ことわざ(737)儒教開祖の孔子の名言 To see the right and not to do it is cowardice.(正しいと知ったら、臆病にならず行動せよ)
https://www.eionken.co.jp/note/to-see-the-right/
心に響く英語ことわざ(739)『マイ・フェア・レディ』の原作者でアイルランド出身の劇作家ジョージ・バーナード・ショーの名言 The worst sin toward our fellow creatures is not to hate them, but to be indifferent to them: that’s the essence of inhumanity.(他者への無関心こそが、最も恐ろしい悪)
https://www.eionken.co.jp/note/the-worst-sin-toward-our-fellow-creatures/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。