- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 204.心に響く英語ことわざ2
公開日
2025.11.18
更新日
2025.11.19
心に響く英語ことわざ(852)「ファウスト」で有名なドイツの文豪ゲーテの名言 Every spoken word arouses our self-will.(対話において人間のプライドや自尊心への配慮が重要)
“Every spoken word arouses our self-will.”
直訳は「発せられるすべての言葉は、私たちの自己の意志を呼び起こす」で、これは、ドイツの文豪ゲーテが、「言葉と個人の意志の強力な関係」について説いた、人間の心理とコミュニケーションに関する深遠な洞察です。
この名言は、人が言葉を発すること(spoken word)、あるいは他人の言葉を聞くことは、必ずやその人の「自己の意志(self-will)」、すなわち自立性、自我、あるいは抵抗の精神を刺激し、対話の力を大きく左右するという真理を表現しています。
名言の意味:言葉は自我を揺さぶるトリガーである
この言葉は、ゲーテの「人間行動における自己主張の普遍性」という哲学に基づいています。言葉が単に情報を伝達するだけの手段でなく、個人の内面に働きかけ、特に「自己の意志(self-will)」という強固な領域を刺激する力を持つという点を示唆しています。
鍵となる要素
- Every Spoken Word(発せられるすべての言葉) 対話や議論など、人が意識的に発する言葉全体を指します。言葉は、誰かに何かを主張したり、説得したりする意図を持っているため、必ず相手の内面に作用します。
- Arouses Our Self-Will(私たちの自己の意志を呼び起こす) 「Self-will」は、自分の信念や欲求に従おうとする意志、あるいは「自我」や「頑固さ」といった自己主張の精神を意味します。
- 言葉を聞くことは、相手の主張に対して「賛成か反対か」「従うか抵抗するか」という反応を促します。特に、権威的な言葉や命令的な言葉は、反発心という形でこの「自己の意志」を強く呼び起こす傾向があります。
この名言は、コミュニケーションにおける「聞く側の抵抗」の存在を教えてくれます。人は、他者の言葉を聞いた瞬間から、自動的に自分の自我とその言葉を比較し、対抗する準備を始めるのです。したがって、真に効果的な対話を目指すなら、この「自己の意志」をいかに刺激せず、穏やかに協力を促すかが重要であるという教訓を含んでいます。
類似の名言と教訓
似た意味の英語の名言
- “The greatest problem in communication is the illusion that it has been accomplished.” (コミュニケーションにおける最大の問題は、それが達成されたという錯覚である。) ジョージ・バーナード・ショーの名言とされ、言葉を発しただけでは相手の「自己の意志」が目覚め、真の理解や同意には至らないことの難しさを示唆しています。
- “When we are arguing with an opponent, the most likely thing we will do is to reinforce their beliefs.” (相手と議論しているとき、最も起こりやすいのは、彼らの信念を強化してしまうことだ。) 討論や口論が相手の「self-will」を強くしてしまうという、この名言の実践的な結果を表しています。
似た意味の日本語のことわざ
- 「売り言葉に買い言葉」(うりことばにかいことば) 意味: 相手の言葉に対して、すぐに負けじと言い返すことを意味します。言葉が相手の反発(self-will)を呼び起こし、対立をエスカレートさせる様子を示しています。
- 「口は災いの元」(くちはわざわいのもと) 意味: 不用意な発言が、争いや不幸を招く原因となるという意味です。言葉が相手の「self-will」を刺激して引き起こすネガティブな結果を警告しています。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)の生い立ち
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)は、ドイツの詩人、小説家、思想家であり、ヨーロッパ文学の巨星です。
彼は、法学、詩作、政治、科学と多岐にわたる分野で活躍し、特に政治家としても長い間仕えました。ゲーテは、人間の複雑な心理を深く洞察しており、『ファウスト』などの作品でも、登場人物の内面の葛藤や自己主張を緻密に描きました。彼が「Every spoken word arouses our self-will」と説いたのは、人々を指導し、説得しようとする政治家としての立場から、言葉を選ぶことの難しさと、人間が持つ本源的な抵抗の精神を痛感していたからに他なりません。この名言は、対話における人間のプライドや自尊心への配慮の重要性を教えてくれます。
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心に響く英語ことわざ(851)「マイフェアレディ」の原作で有名なアイルランドの劇作家ジョージ・バーナード・ショーの名言 Silence is the most perfect expression of scorn.(沈黙によって軽蔑を表現する)
https://www.eionken.co.jp/note/silence-is-the-most-perfect-expression/
心に響く英語ことわざ(853)道教開祖の老子の名言 If you do not change direction, you may end up where you are heading.(勇気をもって「方向転換」し、本来の自然で健全な方向へと自己を導くべき
https://www.eionken.co.jp/note/if-you-do-not-change-direction/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。
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