- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 204.心に響く英語ことわざ2
公開日
2025.12.07
更新日
2025.12.07
心に響く英語ことわざ(889)イギリスの哲学者バートランド・ラッセルの名言 If an opinion contrary to your own makes you angry, that is a sign that you are subconsciously aware of having no good reason for thinking as you do.(痛いところを突かれる)
“If an opinion contrary to your own makes you angry, that is a sign that you are subconsciously aware of having no good reason for thinking as you do.”
直訳は「もしあなたの意見と反対の意見があなたを怒らせるなら、それはあなたがそう考える正当な理由を持っていないことに無意識のうちに気づいているという兆候である」で、似た意味の表現に「痛いところを突かれる」や「図星を指される」があります。
バートランド・ラッセル(Bertrand Russell)の名言 If an opinion contrary to your own…の意味
この言葉は、20世紀を代表する知性の一人であるバートランド・ラッセルが、人間が抱く「不寛容」や「偏見」の心理的メカニズムを鋭く指摘したものです。彼は、論理的で確固たる証拠がある場合、人は反対意見に対して怒りではなく「哀れみ」や「訂正しようとする冷静さ」を感じるはずだと説きます。怒りが湧くのは、実は自分の中に自信のなさや、盲目的な思い込みがあるからだというのです。
この言葉が意味すること この名言は、自分の「怒り」を自己分析のツールとして使うことを勧めています。
- 「If an opinion contrary to your own makes you angry」(もし反対意見があなたを怒らせるなら) 例えば、「2たす2は5だ」と主張する人がいても、あなたは怒らないでしょう。ただ「間違っているな」と同情するだけです。しかし、政治や宗教、倫理観などについて反対意見を言われると、激昂してしまうことがあります。ラッセルは、この感情の違いに着目しました。
- 「that is a sign that you are subconsciously aware」(それはあなたが無意識に気づいている兆候だ) 怒りは防衛反応です。論理で勝てない、証拠が不十分である、あるいは単なる「信じたい」という願望に基づいている場合、人はその脆弱さを守るために攻撃的になります。
- 「of having no good reason for thinking as you do」(そう考える正当な理由を持っていないことに) ラッセルは、「最も野蛮な論争は、どちらにも適切な証拠がない問題について起こる」とも述べています。この名言は、反対意見に腹が立った時こそ、「あれ? 自分はなぜこんなに怒っているのだろう? もしかして根拠が薄いのかも?」と疑ってみるべきだという、知的謙虚さへの教訓です。
似た意味の英語のことわざ
- “The truth hurts.” (真実は痛む。) 本当のこと(図星)を言われると、精神的な痛みや怒りを感じるという意味で、ラッセルの指摘する「怒りの原因」と通じます。
- “Methinks the lady doth protest too much.” (あの貴婦人は抗議しすぎているように思う。) シェイクスピアの『ハムレット』からの引用。過剰に否定したり怒ったりするのは、逆にやましいことがある証拠だという意味で使われます。
似た意味の日本語のことわざ
- 「痛いところを突かれる」 弱点や、触れられたくない真実を指摘されて動揺すること。ラッセルが言う「無意識の自信のなさ」に触れられた状態です。
- 「図星を指される」 指摘が当たっていて、隠していたことがばれること。その結果、逆ギレしてしまう心理と関連します。
バートランド・ラッセル(Bertrand Russell)の波乱万丈な生い立ち
バートランド・ラッセル(1872-1970)は、イギリスの哲学者、論理学者、数学者であり、ノーベル文学賞受賞者です。
- 名門貴族と孤独な幼少期 ラッセルはイギリス首相を祖父に持つ名門貴族の家に生まれましたが、幼くして両親と死別し、厳格な祖母に育てられました。孤独な少年時代、彼は自殺を考えるほど悩みましたが、「数学をもっと知りたい」という知的欲求だけが彼をこの世に繋ぎ止めました。
- 数学者から平和活動家へ ケンブリッジ大学で学び、ホワイトヘッドと共に大著『プリンキピア・マテマティカ』を著し、現代論理学の基礎を築きました。しかし、第一次世界大戦が始まると、彼は象牙の塔に留まることを拒否し、反戦平和運動に身を投じました。その活動によりケンブリッジ大学を追われ、半年間の投獄も経験しました。
- 98歳まで続いた闘い 彼はその後も、女性の権利、自由恋愛、核軍縮など、常にリベラルな立場で社会問題に発言し続けました。4度の結婚と3度の離婚を経験するなど私生活も奔放でした。晩年もアインシュタインと共に「ラッセル=アインシュタイン宣言」を発表し、核兵器廃絶を訴えるなど、98歳で亡くなる直前まで、知性と行動力を兼ね備えた「行動する哲学者」として世界に影響を与え続けました。
名言の出典
エッセイ集『Unpopular Essays』(1950年出版)に収録されているエッセイ、「An Outline of Intellectual Rubbish(知的馬鹿らしさの概略)」(初出1943年)より。
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心に響く英語ことわざ(888)米国独立に尽力したベンジャミン・フランクリンの名言 By failing to prepare, you are preparing to fail.(準備の欠如は失敗への道)
https://www.eionken.co.jp/note/by-failing-to-prepare/
心に響く英語ことわざ(890)「異邦人」で有名なフランスの作家アルベール・カミュの名言 The realization that life is absurd cannot be an end, but only a beginning.(不条理の認識は、幻想を捨てて現実を直視し、自らの意志で人生を創造していくための「スタートライン」)
https://www.eionken.co.jp/note/the-realization-that-life/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。

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