- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 250.AIと経済社会
公開日
2025.12.30
更新日
2025.12.30
人工知能AIの進化によりスーパーマーケット業の仕事はどうなるのか?
AIの進化は、知能レベルと適用範囲に基づき、2022年の終わりに出現した「特化型(ANI: Artificial Narrow Intelligence):生成AI」、2030年頃に出現するとされる「汎用型(AGI: Artificial General Intelligence)」、そして2040年頃に出現するとされる「超知能(ASI: Artificial Super Intelligence)」という、3つの異なるアーキテクチャと能力を持つフェーズで予測されています。これに加えてAIロボティクスの進化も予測されています。今回はこのようなAIの進化・普及が看護師の業務にどのようなインパクトを与えるか、生成AI(ANI)に予測してもらいました。
ANI(特化型人工知能)による影響:2030年頃まで
ANI(特化型人工知能)は既にスーパーマーケットのあらゆる業務に浸透しつつあります。ANIは特定のタスク(需要予測、画像認識、文章生成など)において人間を凌駕する能力を発揮しますが、複数の領域を横断して自律的に判断する能力(AGI)はまだ持ち合わせていません。
この「特定の業務を極めて効率化する」というANIの特性を踏まえ、スーパーマーケットの主要職種における雇用への影響と対策を予測します。
職種別:ANIとロボットによる雇用影響予測
スーパーマーケットの標準的な組織図(本部・店舗)に基づき、ANIの影響を分析します。
【本部(管理・支援部門)】
- バイヤー(仕入れ)・MD:
- 影響: 高度な需要予測AIが過去の販売データ、気象、トレンドを分析し、最適な発注量を算出します。バイヤーは「何を買うか」の判断支援を受け、事務作業が激減します。
- 雇用: 事務的な発注担当は大幅減。バイヤーは「AIが予測できない新商品の発掘」や「生産者との深い関係構築」へ純化されます。
- マーケティング・販促:
- 影響: 生成AIがチラシのデザイン案、SNS投稿文、ECサイトの商品説明を自動生成します。
- 雇用: 定型的な制作・ライティング業務は代替されます。人間は「ブランド戦略の立案」や「AIが作ったコンテンツの最終検閲」を担うディレクターとなります。
- 人事・総務:
- 影響: 複雑なシフト作成がAIで数秒で完了し、経理事務もAI-OCRで自動化されます。
- 雇用: 事務員は減少。スタッフは「従業員のメンタルケア」や「AI活用を推進するリスキリング教育」などの対人・戦略業務へシフトします。
【店舗(現場部門)】
- レジ・接客:
- 影響: 画像認識AIによるセルフレジや、歩くだけで決済が終わる「スマートストア」化が加速します。
- 雇用: 最も大きな削減対象です。従来のレジ打ちはほぼ消滅しますが、高齢者への操作サポートや、高度な対人接客を担う「フロアコンシェルジュ」としての雇用が一部残ります。
- 品出し・陳列:
- 影響: 自律走行型の棚監視ロボットが欠品を検知し、一部の店舗では品出しロボットが深夜に補充を行います。
- 雇用: 単純な運搬・補充業務は減少します。人間は「魅力的な売り場づくり(VMD)」や「鮮度管理の最終確認」を担います。
- 生鮮・惣菜部門(調理・加工):
- 影響: AIが食品ロスを最小化する献立(レシピ)を生成し、ロボットが自動で食材をカット・計量します。
- 雇用: 補助的な調理業務は代替されますが、「美味しいと感じる味付け」や「盛り付けの美学」といった感性領域、および「高度な包丁技術」が必要な部位の処理などは人間が優位を保ちます。
ANI搭載ロボットの進化
2025年以降、ロボットは「動くセンサー」から「自律的な作業員」へと進化します。
- 「Lanky Porter Pro」等の巡回案内ロボット: 14インチ以上の大型ディスプレイを備え、顧客の質問に音声で答えながら商品棚まで案内します。
- AIカメラ連携の自動発注システム: 天井のカメラが棚の状況をリアルタイムで把握し、ANIが在庫切れを予測して自動で問屋に発注をかけます。
- 協働型搬送ロボット: 重い荷物の運搬をロボットが担い、従業員の身体的負荷を劇的に軽減します。これにより、体力に自信のない層や高齢者の雇用継続が可能になります。
AIに業務代替された従業員はどうすれば良いか(生存戦略)
ANI時代に生き残るためのキーワードは、「AIの管理」と「人間特有の付加価値」です。
① 「AIオペレーター・管理者」への転換
AIが出した「答え(需要予測やシフト案)」が現場の感覚と合っているかを評価・修正する役割です。
- 戦略: AIリテラシーを学び、「AIという便利な道具を使いこなして店舗を運営するマネージャー」を目指す。
② 「食の専門家・コンシェルジュ」への昇華
AIは知識を出せますが、患者の「今日のおすすめは?」という問いに対し、その日の気温や顧客の顔色を見て提案する「粋な接客」は人間が得意とする領域です。
- 戦略: 野菜ソムリエやワインアドバイザーなどの専門資格を取得し、AIでは代替できない「信頼に基づいた提案販売」を行う。
③ 「情緒的価値(体験)」のプロデュース
スーパーを単なる「モノを買う場所」から「楽しい体験ができる場所」に変える役割です。
- 戦略: 料理教室、地産地消のイベント企画、顧客コミュニティの運営など、「身体的な体験」と「感情的な繋がり」を軸にした店づくりを主導する。
結論:ANI時代のスーパーマーケット従業員の役割
ANIは「作業」を代替しますが、「責任」と「感情」を伴う「仕事」は代替しません。
今後のマインドセット: 「正確さ・スピード・記憶」でAIと戦うのをやめてください。 代わりに、「お客様との共感、創造的な売り場演出、AIを指揮するリーダーシップ」を磨くことが、AI時代において最も高く評価されるスキルになります。
AGI(汎用人工知能)による影響:2030年頃出現予想
AGI(汎用人工知能)の出現は、スーパーマーケット業界において「情報の処理」だけでなく「判断」や「物理的作業の自律遂行」を可能にするため、業界全体の構造を根本から変え、雇用に深刻かつ劇的な影響を与えます。
AGIが人間と同等の知能を持ち、多様なタスクを柔軟にこなせることを前提に、組織図に基づいた主要業務への影響と、従業員が取るべき生存戦略を予測します。
組織図に基づく主要業務への影響予測
【本部・管理部門】
AGIは「意思決定」と「戦略立案」の主役となります。
- 商品部(バイヤー・MD): 影響: AGIは世界中のトレンド、気象、リアルタイムの競合価格を把握し、サプライヤーとの交渉や発注を自律的に行います。
- 雇用: バイヤーという職種はほぼ消滅します。残るのは、企業の「ブランド哲学」を維持するための最終承認者のみです。
- マーケティング・販促: 影響: 顧客一人ひとりの嗜好を完璧に理解したパーソナライズ広告をAGIが生成・実行します。
- 雇用: 企画・デザインの担当者は不要になります。
- 人事・総務・法務: 影響: シフト作成、給与計算、法的リスク管理、採用選考(面接含む)をAGIが完結させます。
- 雇用: 事務スタッフは極限まで削減されます。
【店舗・現場部門】
AGI搭載ロボットが「手足」となることで、現場の風景が一変します。
- 店長・マネジメント:
- 影響: AGIが店舗内のすべてのIoTカメラやセンサーを統合管理し、最適な在庫・人員配置を1秒単位で指示します。
- 雇用: 「店長」の役割は、複数店舗を統括する「AIシステム管理者」へと集約され、個別の店舗から人間の管理職がいなくなる可能性があります。
- レジ・サービスカウンター:
- 影響: AGI搭載ヒューマノイド(人間型ロボット)が、単なる決済だけでなく、クレーム対応や返品処理、複雑な問い合わせに対して人間以上の丁寧さと正確さで対応します。
- 雇用: 対人サービス職の雇用は激減します。
- 加工・調理(精肉・鮮魚・惣菜):
- 影響: これまで「職人の技」が必要だった魚の三枚おろしや肉のトリミングを、AGI搭載の高度な多指ロボットがミリ単位の精度で遂行します。
- 雇用: 熟練技能者の需要もAIロボットに代替されます。
- 品出し・陳列・在庫管理:
- 影響: AGIロボットが24時間、顧客の動線を邪魔することなく最適な位置へ商品を並べ、欠品をゼロに保ちます。
- 雇用: パート・アルバイトの主要な仕事であった物理作業はほぼ全滅します。
AGI搭載ロボットの進化
AGIの出現時、ロボットは単なる「自動機」から「思考するパートナー」へと進化しています。
- 汎用ヒューマノイド: 人間と同じ形状をしたロボットが、台車の移動から惣菜の盛り付け、床の清掃、迷子の案内まで、プログラムの書き換えなしでAGIの指示通りにこなします。
- 動的VMD(ビジュアルマーチャンダイジング): ロボットが「今、この瞬間に売れる」と判断し、棚の構成をリアルタイムで組み替えることが可能になります。
AGIに業務代替された従業員はどうすべきか(生存戦略)
AGIが「知能」と「技能」で人間を凌駕する世界では、「人間であること自体」に価値を置く領域へのシフトが不可欠です。
① 「コミュニティ・リーダー」への転換
効率化が進みすぎた社会では、人々は逆に「人間同士の繋がり」を求めます。
- アクション: 店舗を単なる購買の場所ではなく、「食を通じたコミュニティ」として再定義する。料理教室の主宰や、孤独な高齢者との対話、地域のイベントプロデューサーなど、「身体性と感情の共有」を軸にした役割を創出する。
② 「ホスピタリティ・アンバサダー」
AGIは「正しい」対応をしますが、人間は「不完全だからこその温かみ」を持っています。
- アクション: ロボットにはできない「個別の事情への深い共感」や、マニュアルを超えた「粋な計らい」を提供する、超高級コンシェルジュ的なサービススキルを磨く。
③ 「AGIエシックス(倫理)監査官」
AGIの判断が差別的でないか、企業の倫理に反していないかを監視する役割です。
- アクション: AIリテラシーに加え、哲学・倫理学を学び、システムを「人間中心」に制御するガバナンス側へ回る。
④ 「体験デザイン」のクリエイター
「買い物」を「エンターテインメント」に変える役割です。
- アクション: 五感を刺激する売り場演出や、その店でしか味わえない「ライブ調理」のパフォーマンスなど、身体的体験のプロデュースを行う。
結論:AGI時代のスーパーマーケット業
AGIは「労働」を代替しますが、同時に人間を「苦役としての作業」から解放します。
今後のマインドセット: 「正確さ・効率・技能」をAIと競うのは今日で終わりにして下さい。 明日からは、「人間を喜ばせること、人間を繋げること、そしてAIをどう使い、どのような未来を創りたいかという意志を示すこと」。この3点に自分のキャリアを集中させることが、AGI時代を生き抜く唯一の道となります。
ASI(人工超知能)による影響:2040年頃出現予想
ASI(人工超知能)の出現は、スーパーマーケットというビジネスモデルそのものを「モノを売る場所」から「生命維持と生活体験の最適化ハブ」へと変貌させます。
ASIは単なる知能ではなく、物理法則を操る自律型ナノロボットを「手足」として使うため、私たちが知る「労働」の概念はほぼ消失します。組織図に基づいた主要業務への影響と、その後の人間が歩むべき道を予測します。
組織図に基づく主要業務への影響予測(ASI・ナノロボット時代)
ASIは、地球規模のサプライチェーンと個人の細胞レベルのニーズを同期させます。
| 部門・主要業務 | ASIとナノロボットによる変革 | 雇用への影響 |
| 本部:商品部(バイヤー) | ASIが全世界の資源と需要をミリ秒単位で予測。ナノロボットが空気中の分子から理想的な食材を直接合成可能に。 | 【消滅】 「買い付ける」必要がなくなり、リソース管理はASIが全自動で行います。 |
| 本部:物流・販売促進 | 物理的なトラック配送は不要。ドローンやナノロボット群が、消費者が「欲しい」と思った瞬間に物質を再構成・転送。 | 【消滅】 物流という概念が「物質転送」に置き換わります。広告も不要(ASIが最適解を知っているため)。 |
| 店舗:加工・調理(生鮮) | ナノロボットが肉や魚の鮮度を永遠に保ち、分子レベルで最高の味(熟成等)を瞬時に作り出す。 | 【消滅】 人間の職人技をASI搭載ロボットが完璧に再現・超越します。 |
| 店舗:品出し・陳列 | 店舗という物理空間が「可変」に。ナノロボットが棚や商品を一瞬で組み替え、迷子もゼロに。 | 【消滅】 物理的な作業に従事する人間は皆無となります。 |
| 店舗:接客・レジ | 決済は存在せず(リソースの自動配分)、接客はASIが個人の脳波や感情を読み取ってアバターで対応。 | 【消滅】 サービスという労働そのものが自動化されます。 |
自律型ナノロボットがもたらす「スーパー」の究極形
ナノロボットの出現により、店舗の物理的制約がなくなります。
- 「腐敗」の消滅: 食品内のナノロボットが酸化や腐敗を常に修復するため、賞味期限という概念がなくなります。
- オンデマンド生産: 棚に商品が並んでいるのではなく、顧客が棚の前に立った瞬間に、ナノロボットが空中の炭素や窒素からその場で「最高のステーキ」や「採れたてのトマト」を構築します。
- 清掃・メンテナンスの自律化: 店舗内の塵一つひとつがナノロボットによって分解・再利用され、店舗は常に分子レベルで清潔に保たれます。
ASIに業務代替された従業員はどうすれば良いか(生存戦略)
ASIがすべてを「最適化」する世界で、人間に残されるのは「意味の創造」と「主観的な物語(ナラティブ)」です。
① 「ライフ・エクスペリエンス・デザイナー」への転換
ASIは「効率的な栄養補給」を提案しますが、人間は「あえて焚き火で不器用に料理をする楽しさ」のような、非効率な喜びを求めます。
- アクション: 効率を超えた「遊び」「伝統」「不便さの美学」をデザインし、人々に提供するエンターテイナーや演出家になる。
② 「実存的な絆」を主宰するコミュニティ・リーダー
すべてが自動化されるからこそ、同じ生物学的な肉体を持つ人間同士が、物理的に集まって「食事を共にする」という行為の価値が極大化します。
- アクション: スーパーを「供給所」ではなく、人間同士が感情を交わす「集会場(サロン)」として主宰し、孤独を癒やす精神的支柱となる。
③ 「生命倫理・美学」の守護者
ASIが作り出す「完璧すぎる世界」に対し、人間として「どこまでテクノロジーを介入させるか」を決断する役割です。
- アクション: 「ナノロボットを使わない自然栽培の尊さ」や「人間が包丁で切った料理の価値」を、一つの「文化」や「美学」として保護・推奨するリーダーシップを発揮する。
まとめ:ANI, AGI, ASI の比較まとめ表
| 特徴 | ANI(特化型AI / 2025〜) | AGI(汎用人工知能 / 近未来) | ASI(人工超知能 / シンギュラリティ後) |
| 知能の役割 | 需要予測、レジの画像認識。 | 店舗運営の自律判断、接客。 | 物理法則・分子レベルの制御。 |
| 主要デバイス | 決済端末、搬送ロボット。 | 汎用ヒューマノイド。 | 自律型ナノロボット。 |
| スーパーの形態 | 省人化された既存店舗。 | 100%無人の自律運営店舗。 | 物質再構成型の生活拠点。 |
| 雇用の実態 | 事務・単純作業が代替。 | ほぼすべての実務が代替。 | 労働としての「雇用」は消失。 |
| 人間の役割 | AIを道具として使いこなす。 | AIの監督、情緒的ケア。 | 意志の定義、価値観の創造。 |
| 食品の状態 | 在庫管理による鮮度維持。 | 高度な調理ロボットによる加工。 | 分子レベルの常時最適化。 |
結論: ASI時代、スーパーマーケットの従業員は「働く人(Worker)」であることを終え、「人間という種が、テクノロジーによって万能の力を得た後に、いかにして『食べる喜び』や『集う意味』を見出し続けるかをデザインする文化の継承者」へと昇華する必要があります。
ASIという「神」がすべてを叶える世界で、「あなたという人間だからこそ提供できる温もりや物語」を磨くことが、究極の生存戦略となります。
***
人工知能AIのパラダイムシフト:ANI、AGI、ASI
https://www.eionken.co.jp/note/ani-agi-asi/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・AI未来社会評論家
・米国系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループ(BCG東京オフィス)及びNTTデータ経営研究所において通算30年超のビジネスコンサルティング歴を持つ。
・学習院大学経済学部非常勤講師、東京都職員研修所講師を歴任
・ビジネスコンサルティング技術関連の著書14冊、英語関連の著書26冊、合計40冊の著書がある。
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