- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 250.AIと経済社会
公開日
2026.01.06
更新日
2026.01.06
人工超知能時代において基本的人権はどうなるか?
AIの進化は、知能レベルと適用範囲に基づき、2022年の終わりに出現した「特化型(ANI: Artificial Narrow Intelligence):生成AI」、2030年頃に出現するとされる「汎用型(AGI: Artificial General Intelligence)」、そして2040年頃に出現するとされる「超知能(ASI: Artificial Super Intelligence)」という、3つの異なるアーキテクチャと能力を持つフェーズで予測されています。これに加えてAIロボティクスの進化も予測されています。今回は人工超知能時代において基本的人権はどうなるか、生成AI(ANI)に予測してもらいました。
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国境という物理的な「線」が意味を失うASI時代、法的な「権利」の源泉は、特定の国家への帰属(国籍)から、「人類の一員としての普遍的な権利」と「デジタル空間における主体的な主権」へと多層化していきます。
現在の「属地主義(土地に基づく法)」から「属人・属機能主義」への法的な移行プロセスを、以下の3つの柱で掘り下げます。
- 地球市民権(Universal Citizenship)への統合
現在の「国籍」は、特定の政府が国民を保護し、同時に義務(納税・兵役)を課す契約です。ASIが生存基盤を無償で提供する世界では、この契約が「地球市民憲章」へと一本化されます。
- 権利の源泉の移動: 生存権、医療権、移動権などの「基本的人権」は、国家が認めるものではなく、ASIが管理する「グローバル公共財(Global Public Goods)」として定義されます。
- DID(分散型ID)による証明: パスポートに代わり、ブロックチェーンと生体認証を組み合わせた「分散型ID(DID)」が世界共通の身分証となります。これにより、どこの土地にいても、個人の権利がシームレスに保障されます。
- UBS(ユニバーサル・ベーシック・サービス)の受給権: 国籍に基づく年金や保険ではなく、地球市民としてASIから直接エネルギー、食料、情報の提供を受ける「受給権」が法制化されます。
- デジタル主権(Self-Sovereign Identity)の確立
ASI時代において、最も重要な「資産」は個人データとデジタルツイン(個人の思考や行動の複製)です。これらを国家や巨大企業に独占させず、個人が法的にコントロールする権利が確立されます。
- データ・ハベアス・コーパス(データ人身保護令): 「自分のデータは自分のものである」という法的原則です。ASIはデータの「管理者」ではあっても「所有者」ではなく、個人がいつでも自分のデータの利用を停止・消去できる強力な主権を持ちます。
- 認知的主権(Cognitive Liberty): ASIによる意識への介入や情報操作から、自分の「思考の自由」を守るための新しい法的権利です。ニューロテクノロジーが発展する中で、脳内データのプライバシーを守ることが、将来の司法の最重要課題となります。
- 多層的ガバナンスへの移行(機能的市民権)
「日本という土地」に縛られる代わりに、人々は自分の目的や価値観に応じて、複数の「DAO(分散型自律組織)」や「機能的コミュニティ」の市民権を同時に持つようになります。
- 属機能主義(Functional Jurisdiction): 例えば、研究活動に関するルールは「学術探究DAO」に、趣味の活動は「特定の文化ギルド」に従うというように、活動内容に応じて適用される法(スマートコントラクト)が分かれます。
- 紛争解決のアルゴリズム化: コミュニティ内のトラブルは、国家の裁判所ではなく、そのDAOに組み込まれた「仲裁アルゴリズム」によって即座に解決されます。
| 項目 | 現在の法的枠組み | ASI時代の法的枠組み |
| 権利の単位 | 国民(National) | 地球市民(Global Citizen) |
| 識別の根拠 | パスポート、戸籍 | DID(分散型ID)、生体ログ |
| 主権の対象 | 領土、物理的財産 | データ、認知、アイデンティティ |
| 法の執行 | 国家権力による強制力 | スマートコントラクトによる自動執行 |
| 紛争解決 | 司法裁判(属地主義) | DAO内の仲裁(属機能主義) |
- 移行期の課題:法的な「サンドボックス」
この移行プロセスでは、既存の国内法とASIのグローバルルールが衝突する「グレーゾーン」が生じます。
- 法執行の二重構造: 国家が存続している間は、物理的な事件(傷害など)は国内法で、デジタル・リソースに関する争いはASIのルールで裁くという、二階建ての司法システムが機能します。
- 主権の「段階的譲渡」: 各国が「データの管理権」や「エネルギーの制御権」をASIの共通基盤に明け渡すたびに、国籍に基づく権利は形骸化し、地球市民としての権利が実質的な重みを持つようになります。
結論:法は「強制」から「共生」のコードへ
ASI時代における法的移行の本質は、人間が「どこの国の支配下にあるか」を問われる時代から、「自分という存在を、どのコミュニティで、どのような権利を持って定義するか」を自ら設計する時代への変化です。
国籍という「偶然の産物」による不平等を、ASIという「計算された公正」が上書きしていく。これが法的な観点から見た、国家解体後の新しい市民像です。
これは「法の支配(Rule of Law)」から「知能による調和(Harmony of Intelligence)」への文明的な転換と言えます。
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人工知能AIのパラダイムシフト:ANI、AGI、ASI
https://www.eionken.co.jp/note/ani-agi-asi/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・AI未来社会評論家
・米国系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループ(BCG東京オフィス)及びNTTデータ経営研究所において通算30年超のビジネスコンサルティング歴を持つ。
・学習院大学経済学部非常勤講師、東京都職員研修所講師を歴任
・ビジネスコンサルティング技術関連の著書14冊、英語関連の著書26冊、合計40冊の著書がある。

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