- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 204.心に響く英語ことわざ2
公開日
2025.11.13
更新日
2025.11.13
心に響く英語ことわざ(835)道教開祖の老子の名言 Do the difficult things while they are easy and do the great things while they are small. A journey of a thousand miles must begin with a single step.(千里の道も一歩から)
“Do the difficult things while they are easy and do the great things while they are small. A journey of a thousand miles must begin with a single step.”
直訳は「難しいことは簡単なうちに行い、偉大なことは小さなうちに行いなさい。千里の旅も、最初の一歩から始まらねばならない」で、これは、道家思想の創始者である老子が、「行動の時宜と累積的な努力の力」について説いた、成長と目標達成に関する実践的な知恵です。
すべての大きな成果は、問題が小さく、容易に対処できるうちに行われる「初期の行動」と、その後の「一歩ずつの継続」によってのみ可能になるという、道家の哲学と実用的な知恵が融合した教えを表現しています。
名言の意味:初期段階での行動の重要性
この言葉は、老子の『道徳経』の「治大国若烹小鮮(大きな国を治めることは小さな魚を料理するようなものだ)」の思想に通じます。大きな問題や偉業は、その初期段階ではまだ対処しやすい「小さな状態」にあり、そこで行動を起こすことが最も効率的かつ重要であるという教訓です。
鍵となる二つの原則
- Do the difficult things while they are easy and do the great things while they are small.(難しいことは簡単なうちに行い、偉大なことは小さなうちに行いなさい。)
- 難しいことは簡単なうちに:問題や困難は放っておけば膨張していきます。まだ対処が「簡単(easy)」な「小さな芽」のうちに解決しておくことが、将来の「大きな困難」を防ぎます。
- 偉大なことは小さなうちに:偉大な目標(great things)も、最初は必ず「小さな行動(small)」から始まります。最初の小さな行動をおろそかにせず、大切に育てることが、巨大な結果へと繋がります。
- A journey of a thousand miles must begin with a single step.(千里の旅も最初の一歩から始まらねばならない。) 目標達成の普遍的な原理を示しています。千里(a thousand miles)という途方もない目標も、「単なる一歩(single step)」という最初の行動なくしては永遠に始まらないという、行動の「始まり」の絶対的な重要性を強調しています。
類似の名言と教訓
似た意味の英語の名言
- “The best time to plant a tree was 20 years ago. The second best time is now.” (木を植えるのに最適な時期は20年前だった。二番目に最適な時期は今だ。) 行動を先延ばしにせず、今すぐ始めることの重要性を説く点で老子の教えと一致します。
- “An ounce of prevention is worth a pound of cure.” (一オンスの予防は、一ポンドの治療に値する。) 問題が「簡単なうち」に対処する(予防)ことの価値が、問題が大きくなった後の労力(治療)よりも遥かに高いという点で共通します。
似た意味の日本語のことわざ
- 「千里の道も一歩から」(せんりのみちもいっぽから) 意味: どんなに遠く、大きな目標や事業でも、最初の小さな一歩から始まります。老子の名言の最後の部分と同じ教訓を含み、大きな目標を前にして尻込みせず、まず行動を起こすことの大切さを説いています。
- 「備えあれば憂いなし」(そなえあればうれいなし) 意味: 万が一の事に備えて準備しておけば、後で心配する必要がないという意味です。老子が言う「難しいことは簡単なうちに行い」、つまり、問題が大きくなる前に対処(備え)しておくことの重要性と通じています。
老子(Lao Tzu)の生い立ち
老子(紀元前6世紀頃)は、古代中国の春秋時代、周王朝の思想家であり、道家思想の創始者です。
生涯と伝説
- 名前と役職: 老子は本名を李耳(りじ)と言い、周の都で「守蔵室の史」という、歴史記録や書籍を管理する役職に就いていたと伝えられています。これは彼が当時の知の集積に深く触れる機会を持っていたことを示唆します。
- 孔子との交流: 儒教の始祖である孔子が、周の都を訪れた際に老子に礼(礼儀作法や制度)について教えを請いたという伝説的な交流が残っています。この話は、老子が当時から偉大な知恵者として広く認識されていたことを示しています。
- 出奔と『道徳経』: 老子は晩年、周の衰退を見て、この世に絶望して西へと旅立ちました。伝説によれば、国境の関を通る際に役人に請われて、急遽、自らの教えを書き記したものが現在の『道徳経』のもとになったとされています。彼は、この書の中で、「道」に従い、「無為自然」に生きることを説きました。
老子の哲学の中心は、自然の流れに逆らわない「無為自然」ですが、それは「何もしない」ことを意味しません。むしろ、問題が小さく、エネルギーの消費が少ない「然るべき時」に行動することの重要性を説いています。大きな成果は、目立たない「初期の小さな努力」の継続と、困難を未然に防ぐ「予防的な行動」によって得られるという、彼の深い洞察がこの名言に凝縮されています。
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心に響く英語ことわざ(834)ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの名言 To the person with a firm purpose all men and things are servants.(目的が資源を引き寄せる)
https://www.eionken.co.jp/note/to-the-person-with-a-firm-purpose/
心に響く英語ことわざ(836)米国独立に尽力した第三代大統領トーマス・ジェファーソンの名言 Our greatest happiness does not depend on the condition of life in which chance has placed us, but is always the result of a good conscience, good health, occupation, and freedom in all just pursuits.(真の幸福は「富」や「運」に左右されるのではなく、自分の身体と心を整え、社会的な義務を果たす中にある)
https://www.eionken.co.jp/note/our-greatest-happiness/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。
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