- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 204.心に響く英語ことわざ2
公開日
2025.09.02
更新日
2025.09.02

心に響く英語ことわざ(621)「純粋理性批判」で有名なドイツの哲学者イマヌエル・カントの名言 It is beyond a doubt that all our knowledge begins with experience.(経験は最高の教師)
“It is beyond a doubt that all our knowledge begins with experience.”
直訳は「私たちの知識はすべて経験から始まることは、疑いを差し挟む余地がない」で、似た意味のことわざに「経験は最高の教師である」があります。
イマヌエル・カント(Immanuel Kant)の名言 It is beyond a doubt…の意味
この言葉は、ドイツの哲学者であり、ドイツ観念論の祖であるイマヌエル・カントが、「知識の起源」について述べたものです。彼は、私たちが知るすべてのことは、感覚を通して得られる「経験」が第一歩であると説いています。
この言葉が意味すること
この名言は、「経験論」と「合理論」という二つの異なる哲学的な考え方を統合しようとするカントの思想の一端を示しています。
- 「all our knowledge begins with experience」(私たちの知識はすべて経験から始まる) これは、ロックやヒュームといったイギリスの「経験論」哲学者の主張と一致しています。彼らは、人間は「タブラ・ラサ」(空白の石板)として生まれ、すべての知識は経験を通して得られると考えました。カントは、この点を認めています。私たちは、生まれたばかりの赤ちゃんのように、世界を感覚を通して知覚し、そこから知識を形成していくのです。
- 「It is beyond a doubt」(疑いを差し挟む余地がない) カントは、知識の起源が経験にあることは、確固たる事実であると断言しています。しかし、彼は、この言葉の後に続く部分で、経験だけでは知識は成り立たないと説いています。彼は、「知識が経験から始まるとしても、知識すべてが経験から生じるわけではない」と主張しました。彼は、経験を整理し、意味づけするための、私たちの心の中にある「先天的(a priori)」な形式(時間や空間といった概念)の重要性を説きました。
似た意味の英語のことわざ
- “Experience is the best teacher.” (経験は最高の教師である。) これは、知識やスキルを習得する上で、実際に体験することの重要性を強調しています。
- “Seeing is believing.” (見ることは信じること、百聞は一見に如かず。) これは、目で見て、実際に経験することで、初めて物事を信じることができるという意味です。
- “Actions speak louder than words.” (言葉よりも行動が雄弁に語る。) これは、理論や言葉よりも、実際の経験や行動が重要であることを示しています。
似た意味の日本語のことわざ
- 「百聞は一見に如かず」(ひゃくぶんはいっけんにしかず) 百回聞くよりも、一度自分の目で見る方がはるかに良いという意味。カントの言葉を的確に表す日本語です。
- 「習うより慣れろ」 何かを学ぶには、他人に教わるよりも、実際にやってみる方が良いという意味。
- 「経験は宝」 経験は、私たちにとって貴重な財産であり、知識や知恵の源となるという意味。
イマヌエル・カント(Immanuel Kant)の波乱万丈な生い立ち
イマヌエル・カント(1724-1804)は、ドイツの哲学者であり、西洋哲学に最も大きな影響を与えた人物の一人です。彼の哲学は、「批判哲学」と呼ばれ、人間の認識能力の限界と可能性を探求しました。
厳格な家庭とアカデミックな人生
1724年、プロイセン王国(現在のロシア・カリーニングラード)のケーニヒスベルクで、厳格な敬虔主義の家庭に生まれました。彼は、生涯を故郷で過ごし、一度も街を出ることがありませんでした。 彼は、ケーニヒスベルク大学で学び、その後、同大学の教授となりました。彼は、非常に規則正しい生活を送ることで知られており、彼が毎朝散歩に出かける時間が、街の住人にとっての「時計」代わりだったという逸話が残っています。
「批判哲学」の確立
カントは、若い頃はニュートンの物理学や合理論に傾倒していましたが、イギリスの哲学者デヴィッド・ヒュームの懐疑論に触発され、自身の哲学を根本から見直すことになります。 彼は、18世紀後半に『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』という、「三大批判書」を執筆しました。これらの著作で、彼は、知識は経験から始まるが、その経験を可能にするのは、私たちが生まれつき持っている時間や空間といった「先天的」な概念であると説き、合理論と経験論を統合しました。
晩年と遺産
カントは、その生涯において、哲学の探求にすべてを捧げました。彼は、道徳、美学、宗教など、多岐にわたる分野で独自の哲学を築き上げました。 1804年、80歳で亡くなりました。彼の死後、彼の哲学は、ドイツだけでなく、ヨーロッパ全土に大きな影響を与え、その後の哲学の発展を方向づけました。 カントの生涯は、外的な冒険はなかったものの、内面的な思考の旅に満ちたものでした。彼の言葉は、私たちに、知識は、机上の空論ではなく、現実世界との関わりから生まれるという、深い教訓を与え続けています。
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心に響く英語ことわざ(620)古代ギリシアの哲学者ヘラクレイトスの名言 Character is destiny.(三つ子の魂百まで)
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著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。
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