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公開日
2026.01.21
更新日
2026.01.21
量子コンピューターを実現するハードウェア方式はどれが有力か?
2026年現在、量子コンピューターのハードウェア開発は「NISQ(ノイズあり中型量子)」時代から、エラーを克服する「耐故障性量子コンピューター(FTQC)」の実現に向けた第2ステージへと突入しています。
結論から申し上げますと、現在「超伝導方式」と「イオントラップ方式」が先行していますが、ここ数年で「中性原子方式」が猛追しており、さらに将来の長大規模化を見据えて「シリコン方式」や「光方式」が注目を集めているという、「五つ巴」の状況です。
それぞれの方式の特徴と、2026年時点での立ち位置を詳しく解説します。
- 主要なハードウェア方式の比較
現在、有力視されている5つの方式を、その特徴とともにまとめました。
| 方式 | 主要プレイヤー | メリット | 課題 |
| 超伝導 | IBM, Google, Rigetti | 演算速度が非常に速い。既存の半導体技術を応用しやすい。 | 極低温(約-273℃)が必要。量子ビット間の配線が複雑。 |
| イオントラップ | Quantinuum, IonQ | 量子ビットの寿命(コヒーレンス時間)が長く、計算精度が非常に高い。 | 演算速度が比較的遅い。装置が大型化しやすい。 |
| 中性原子 | QuEra, Pasqal | 1,000量子ビット級の大規模化が比較的容易。量子ビットの配置を動的に変えられる。 | 制御用のレーザー技術が高度。演算精度に改善の余地。 |
| シリコン(半導体) | Intel, 産業技術総合研究所 | 既存の工場(CMOSプロセス)を利用でき、超大規模化(数百万個〜)に有利。 | 量子ビットが非常に小さく、制御が極めて難しい。 |
| 光(光量子) | PsiQuantum, Xanadu | 常温動作が可能。光ファイバー網との親和性が高く、ネットワーク化に強い。 | 光子の生成や検出の効率、論理ゲートの実装が困難。 |
- どの方式が「有力」か?(2026年の潮流)
「何をもって有力とするか」によって、注目すべき方式が変わります。
① 総合力と実績の「超伝導方式」
IBMやGoogleが牽引するこの方式は、最も開発が進んでいます。特にGoogleのWillowチップは、量子ビット数を増やすほどエラー率が下がるという「量子エラー訂正」の重要なマイルストーンを突破しており、実用化に最も近い位置にいます。
② 精度とエラー訂正の「イオントラップ方式」
「計算の正確さ」ではイオントラップが圧倒的です。Quantinuum(クアンティニュアム)は、2025年末から2026年にかけて「世界で最も正確な量子マシン」として、論理量子ビット(エラー訂正後のビット)の運用で成果を上げています。
③ スケーラビリティの「中性原子方式」
最近の「ダークホース」から「本命」へと昇格しつつあるのが中性原子方式です。光ピンセットで原子を自由に並べ替えられるため、数百から数千の量子ビットを一つのチップに収めることが可能で、2026年には産業利用に向けた大規模なテストベッドが稼働し始めています。
- 今後の展望:ハイブリッド化の加速
2026年の大きなトレンドとして、「量子・古典ハイブリッド計算」の標準化が挙げられます。一つの方式がすべてを解決するのではなく、特定の計算(化学シミュレーションなど)には超伝導、別の計算には中性原子といった使い分けや、スーパーコンピューター(古典コンピューター)と連携して動かす仕組みが、富士通やNVIDIAなどの主導で整ってきています。
ポイント: 現時点では「超伝導」がリードしていますが、最終的な勝者は「数百万量子ビット」まで拡張できる方式(シリコンや光)になる可能性も残されており、まだ勝負は決まっていません。
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人工知能AIのパラダイムシフト:ANI、AGI、ASI
https://www.eionken.co.jp/note/ani-agi-asi/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・AI未来社会評論家
・米国系戦略コンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループ(BCG東京オフィス)及びNTTデータ経営研究所において通算30年超のビジネスコンサルティング歴を持つ。
・学習院大学経済学部非常勤講師、東京都職員研修所講師を歴任
・ビジネスコンサルティング技術関連の著書14冊、英語関連の著書26冊、合計40冊の著書がある。

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