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公開日
2025.09.05
更新日
2025.09.06

心に響く英語ことわざ(637)実存主義哲学の父デンマークの哲学者キェルケゴールの名言 Once you label me you negate me.(人を見かけで判断するな)
“Once you label me you negate me.”
直訳は「あなたが私にレッテルを貼るとき、あなたは私を否定する」で、似た意味のことわざに「人を見かけで判断するな」があります。
セーレン・キェルケゴール(Soren Kierkegaard)の名言 Once you label me…の意味
この言葉は、デンマークの哲学者、神学者であるセーレン・キェルケゴールが、「レッテル(label)の持つ危険性」について述べたものです。彼は、人を特定のカテゴリーや肩書きで分類することは、その人の持つ多面性や可能性を無視し、その人自身を否定する行為であると説いています。
この言葉が意味すること
この名言は、「人間は、定義づけることのできない、流動的な存在である」という哲学を強調しています。
- 「label me」(私にレッテルを貼る) ここで言う「レッテル」は、「あなたは〜な人だ」「あなたは〜というカテゴリーに属する」といった、固定化された定義を指しています。例えば、「彼は天才だ」「彼女は内気だ」といったレッテルは、一見、その人の特徴を表現しているように見えますが、実際には、その人の持つ他の側面や、将来的な変化の可能性を無視してしまいます。
- 「you negate me」(あなたは私を否定する) この部分が、この言葉の核心です。キェルケゴールは、レッテルを貼ることは、単に人を分類するだけでなく、その人の本質を否定する行為だと考えていました。人間は、常に成長し、変化する存在です。レッテルを貼ることで、私たちは、その人の無限の可能性を閉じ込め、その人を、私たちが勝手に作り上げた固定的なイメージに押し込めてしまうのです。
似た意味の英語のことわざ
- “Don’t judge a book by its cover.” (本を表紙で判断するな。) これは、人を外見や表面的な情報で判断してはならないという教訓です。
- “The greatest deception men suffer is from their own opinions.” (人間が被る最大の欺瞞は、自分自身の意見から来る。) レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉で、自分の先入観や偏見が、真実から目を背けさせる原因になるという点で、キェルケゴールの思想と通じます。
- “No man is an island.” (人は孤島ではない。) これは、人は一人では生きられず、他者とのつながりの中で生きているという意味ですが、キェルケゴールの言葉は、その「他者」を単なるカテゴリーで判断することの危険性を示唆しています。
似た意味の日本語のことわざ
- 「人を見かけで判断するな」 人を外見や肩書き、表面的な情報で判断してはならないという意味。キェルケゴールの言葉を的確に表す日本語です。
- 「十人十色」(じゅうにんといろ) 十人いれば、十人とも考え方や好みが違うという意味。これも、人の多様性を認めることの重要性を示しています。
- 「一概には言えない」(いちがいにはいえない) 物事を一つの基準で判断することはできないという意味で、キェルケゴールの言葉が持つ、真実の多層性を表しています。
セーレン・キェルケゴール(Soren Kierkegaard)の波乱万丈な生い立ち
セーレン・キェルケゴール(1813-1855)は、デンマークの哲学者、神学者、作家であり、実存主義哲学の父とされています。しかし、彼は、その思想が当時の社会に受け入れられず、孤独な生涯を送りました。
幼少期と憂鬱な精神
1813年、コペンハーゲンの裕福な家庭に生まれました。彼は、厳格な父の影響を受け、幼い頃から罪悪感や憂鬱といった精神的な苦悩を抱えていました。 彼は、大学で神学を学びましたが、当時の哲学や社会のあり方に疑問を抱き、独自の思想を形成していきました。
孤独な思想家としての活動
キェルケゴールは、著作を匿名で発表したり、ペンネームを使ったりしました。彼は、多くの人々が、表面的な信仰や、社会的な慣習に従って生きていることを批判し、個人が、自分自身の人生の意味を、主体的に選択することの重要性を説きました。 彼は、既存の権威や常識に反発し、孤独な道を選びました。彼は、婚約者と別れるなど、個人的な関係にも苦悩を抱え、その経験が、彼の哲学に大きな影響を与えました。
晩年と遺産
キェルケゴールは、その著作が、当時の社会にほとんど理解されず、孤独の中で晩年を過ごしました。彼は、1855年に42歳で亡くなりました。 彼の死後、彼の思想は、ニーチェやサルトルといった後の哲学者たちによって再評価され、実存主義という、20世紀の重要な哲学の流れとなりました。 セーレン・キェルケゴールの生涯は、社会の常識に流されることなく、自分自身の内面と向き合い、真理を探求し続けた物語です。彼の言葉は、私たちに、人間を単純なカテゴリーに分類することなく、一人ひとりの個性と可能性を尊重することの重要性を教えてくれます。
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心に響く英語ことわざ(636)古代ギリシアの哲学者ソクラテスの名言 True wisdom comes to each of us when we realize how little we understand…(謙虚さはすべての美徳の土台)
https://www.eionken.co.jp/note/true-wisdom-comes/
心に響く英語ことわざ(638)米国の発明王トーマス・A・エジソンの名言 Restlessness is discontent and discontent is the first necessity of progress.(不満は進歩の必要条件)
https://www.eionken.co.jp/note/restlessness-is-discontent/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。
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