- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 204.心に響く英語ことわざ2
公開日
2025.11.24
更新日
2025.11.24
心に響く英語ことわざ(863)米国独立に尽力した第三代大統領トーマス・ジェファーソンの名言 T The moment a person forms a theory, his imagination sees in every object only the traits which favor that theory. (自らの信念に固執するのでなく、常に現実に従うことが重要)
“The moment a person forms a theory, his imagination sees in every object only the traits which favor that theory.”
直訳は「人がある理論を形成した瞬間、彼の想像力は、すべての物体の中に、その理論に有利になる特徴だけを見る」で、これは、アメリカ合衆国の建国の父トーマス・ジェファーソンが、「確証バイアスと知的探求の危険性」について説いた、科学と理性に関する鋭い心理的洞察です。
この名言は、人が一度、自らの「理論(theory)」や「信念」を確立すると、その後は客観的な事実を探求するのではなく、その理論を裏付ける情報や特徴(traits which favor that theory)だけを選択的に認識してしまうという、人間の認知的な偏り(確証バイアス)の危険性を指摘しています。
名言の意味:理論はフィルターとなり、真実を歪める
この言葉は、ジェファーソンが「啓蒙思想」の理性と客観性を重んじた立場から、人間の心が陥りやすい落とし穴を警告したものです。真実を探求するためには、自らの理論で事実を歪めてはならないという教訓が根底にあります。
鍵となる心理学的プロセス
- The Moment a Person Forms a Theory(人がある理論を形成した瞬間) 「Theory」は、科学的な仮説だけでなく、個人が持つ「信念」「先入観」「固定観念」など、物事を解釈するための枠組みすべてを指します。人はこの理論を持つと、安心感を覚えます。
- His Imagination Sees… Only the Traits Which Favor That Theory.(彼の想像力は…その理論に有利になる特徴だけを見る) 理論が形成された後、心は「想像力(imagination)」という主観的なフィルターを通して世界を見始めます。その結果、理論に反する事実は無視され、都合の良い情報だけが選ばれて増幅されます。これが、現代の心理学でいう「確証バイアス(Confirmation Bias)」の現象です。
この名言は、客観的な真実に到達するためには、「自分の信念が間違っているかもしれない」という自問自答の姿勢(知的な謙虚さ)が絶え間なく必要であるという警告を含んでいます。
類似の名言と教訓
- “The greatest obstacle to discovery is not ignorance—it is the illusion of knowledge.” (発見に対する最大の障害は無知ではない。それは知識の錯覚である。) ダニエル・ブーアスティンの言葉。理論を形成した瞬間、人は自分が「知識(真実)」を持っているという錯覚に陥ります。
- “What a man desires, he also conceives to be the truth.” (人は自分が望むものを、真実だと考える。) フランシス・ベーコンの言葉。理論が形成される背景には、願望や感情が潜んでいることを指摘しています。
- 「我々の確信は最も危険な敵である」 ニーチェの言葉。理論を信じ切ることは、他の可能性を見えなくしてしまうため、進歩を阻害する危険性があることを示唆しています。
トーマス・ジェファーソン(Thomas Jefferson)の生い立ち
トーマス・ジェファーソン(1743-1826)は、アメリカの第三代大統領であり、『アメリカ独立宣言』の主要な起草者です。
- 理性と科学の信奉 ジェファーソンは、啓蒙思想の時代に生きた人物であり、人類の進歩は理性と科学的な探求によってもたらされると信じていました。彼自身も植物学や建築など多分野にわたる研究者であり、客観的な事実と論理に基づく判断を重視しました。
- 知的な誤りへの警告 彼のこの名言は、科学者や政治家が陥りやすい知的な罠を警告するものです。一度、自らの政治的な信念や科学的な仮説を立ててしまうと、それを裏付けようとする傾向(確証バイアス)が、真の進歩を妨げることを知っていたからに他なりません。彼は、人々が自らの信念に固執するのでなく、常に「証拠」に従うことの重要性を強調しました。
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心に響く英語ことわざ(862)道教開祖の老子の名言 Manifest plainness, embrace simplicity, reduce selfishness, have few desires.(足るを知る)
https://www.eionken.co.jp/note/manifest-plainness-embrace-simplicity/
心に響く英語ことわざ(864)相対性理論を構築したドイツの物理学者アルベルト・アインシュタインの名言 I believe that a simple and unassuming manner of life is best for everyone, best both for the body and the mind.(「質素」で「謙虚」な生活こそが、人間が真に健康で幸福な状態を保つための最善の道)
https://www.eionken.co.jp/note/i-believe-that-a-simple-and-unassuming-manner-of-life/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。

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