- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 204.心に響く英語ことわざ2
公開日
2025.12.07
更新日
2025.12.07
心に響く英語ことわざ(890)「異邦人」で有名なフランスの作家アルベール・カミュの名言 The realization that life is absurd cannot be an end, but only a beginning.(不条理の認識は、幻想を捨てて現実を直視し、自らの意志で人生を創造していくための「スタートライン」)
“The realization that life is absurd cannot be an end, but only a beginning.”
直訳は「人生が不条理であるという認識は、終わりではなく、始まりに過ぎない」で、似た意味のことわざに「絶望は希望の始まり」や「窮すれば通ず」があります。
アルベール・カミュ(Albert Camus)の名言 The realization that life is absurd…の意味
この言葉は、カミュの哲学の核となる「不条理(Absurd)」の概念について述べたものです。彼は、人間が人生に意味や合理性を求めようとするのに対し、世界はそれに対して沈黙を守り、何の答えも返さないという矛盾を「不条理」と呼びました。この事実(人生には究極の意味がないこと)に気づいたとき、人は絶望して死(自殺)を選ぶのではなく、むしろそこから、既存の価値観に縛られない真の自由な人生が始まるのだと説いています。
この言葉が意味すること この名言は、困難な認識を受け入れた後の「肯定的な転換」を強調しています。
- 「The realization that life is absurd」(人生が不条理であるという認識) これは、自分が信じていた価値観が崩壊したり、努力が報われない現実に直面したりして、「生きる意味は何なのか?」という答えのない問いにぶつかる瞬間を指します。カミュはこれを否定的なこととは捉えず、真実への目覚めとしました。
- 「cannot be an end, but only a beginning」(終わりではなく、始まりに過ぎない) 絶望や虚無感はゴール(終わり/死)ではありません。意味がないからこそ、何かのために自分を犠牲にする必要もなくなり、この瞬間を情熱的に生きる自由が生まれます。カミュにとって、不条理の認識は、幻想を捨てて現実を直視し、自らの意志で人生を創造していくための「スタートライン」なのです。
似た意味の英語のことわざ
- “When one door closes, another opens.” (一つの扉が閉じれば、別の扉が開く。) 古い希望や価値観が閉ざされたとき(不条理の認識)、新しい可能性(始まり)が開かれるという点で通じます。
- “The truth shall set you free.” (真理はあなたを自由にする。) 聖書の言葉ですが、カミュの文脈では、人生に意味がないという過酷な真実(不条理)を知ることで、逆に義務や幻想から解放され、自由になれるという意味で関連します。
似た意味の日本語のことわざ
- 「絶望は希望の始まり」 どん底を見たときにこそ、本当の希望や新しい道が見えてくるという意味。
- 「窮すれば通ず」(きゅうすればつうず) 事態が行き詰まってどうにもならなくなると、かえって活路が開けるということ。不条理という行き詰まりが、新しい生き方への突破口になるという点と重なります。
- 「開き直る」 ことわざではありませんが、日本の精神性において、どうしようもない状況を受け入れて、逆に堂々と振る舞う態度は、カミュのいう「反抗」や「始まり」に近いニュアンスを持ちます。
アルベール・カミュ(Albert Camus)の波乱万丈な生い立ち
アルベール・カミュ(1913-1960)は、フランスの小説家、劇作家、哲学者です。
- 貧困と病との闘い アルジェリアで生まれ、幼くして父を戦争で亡くし、貧困の中で育ちました。苦学して大学に進みますが、結核により哲学教授への道を断たれます。この「死」と隣り合わせの青春時代が、彼の「不条理」の思想の土壌となりました。
- 不条理の哲学とレジスタンス 第二次世界大戦中はレジスタンス運動に参加し、反ナチスの地下新聞で筆を振るいました。戦後、『異邦人』や『シーシュポスの神話』で、不条理な世界に対する人間の尊厳ある態度(反抗)を描き、サルトルらと共に実存主義文学の旗手とみなされました(本人は実存主義者と呼ばれることを拒否しましたが)。
- 栄光と突然の死 1957年、43歳でノーベル文学賞を受賞。しかし、その栄光のわずか3年後、自動車事故により46歳の若さでこの世を去りました。彼の早すぎる死そのものが、彼が問い続けた「不条理」を象徴するような最期でした。
名言の出典
1938年10月20日付の新聞『アルジェ・レピュブリカン(Alger Républicain)』に掲載された、ジャン=ポール・サルトルの小説『嘔吐』への書評記事より。 原文(フランス語):”Constater l’absurdité de la vie ne peut être une fin, mais seulement un commencement.”(人生の不条理を確認することは、終わりではありえず、始まりにすぎない。)
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心に響く英語ことわざ(889)イギリスの哲学者バートランド・ラッセルの名言 If an opinion contrary to your own makes you angry, that is a sign that you are subconsciously aware of having no good reason for thinking as you do.(痛いところを突かれる)
https://www.eionken.co.jp/note/if-an-opinion-contrary-to-your-own/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。
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