- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 204.心に響く英語ことわざ2
公開日
2025.12.08
更新日
2025.12.09
心に響く英語ことわざ(892)イギリスの哲学者バートランド・ラッセルの名言 To understand the actual world as it is, not as we should wish it to be, is the beginning of wisdom.(現実を直視する)
“To understand the actual world as it is, not as we should wish it to be, is the beginning of wisdom.”
直訳は「私たちがそうあってほしいと願う世界としてではなく、実際のそのままの世界を理解することが、知恵の始まりである」で、似た意味の言葉に「現実を直視せよ」や「事実をありのままに見る」があります。
バートランド・ラッセル(Bertrand Russell)の名言 To understand the actual world…の意味
この言葉は、20世紀を代表する論理学者であり哲学者であるバートランド・ラッセルが、真の知性を獲得するために必要な「客観性」と「科学的態度」について説いたものです。人間は弱い生き物であり、辛い現実を前にすると、どうしても「こうだったらいいのに」という願望(Wishful Thinking)で事実を歪めて解釈したくなります。しかしラッセルは、その甘い幻想を捨てて、冷徹な事実を受け入れる勇気こそが、賢くなるための第一歩だと主張しています。
この言葉が意味すること この名言は、私たちの「認識のバイアス」に対する警告です。
- 「not as we should wish it to be」(私たちがそうあってほしいと願う世界としてではなく) 私たちは無意識のうちに、「自分に都合の良い情報」ばかりを集め、「信じたいこと」を真実だと思い込む傾向があります。これを心理学では「確証バイアス」と呼びますが、ラッセルはこの「願望による歪み」こそが、真理への到達を阻む最大の敵だと考えました。
- 「To understand the actual world as it is」(実際のそのままの世界を理解すること) 世界は時に残酷で、不平等で、無慈悲です。しかし、その不都合な真実から目を逸らして慰めを求めるのではなく、事実を事実として観察し、認めること。そこからしか、本当の解決策や哲学は生まれないと説いています。
- 「is the beginning of wisdom」(それが知恵の始まりである) これはゴールではなく「始まり」です。現実を正しく認識して初めて、私たちは正しい行動や思考を積み上げることができるのです。
似た意味の英語のことわざ
- “Facts do not cease to exist because they are ignored.” (事実は無視されたからといって、存在しなくなるわけではない。) オルダス・ハクスリーの言葉。見たくないものを見なくても、現実は変わらないという点で共通しています。
- “See things as they are, not as you want them to be.” (物事をあるがままに見よ、そうあってほしいようにではなく。) ラッセルの言葉をより平易に言い換えた表現としてよく使われます。
- “The first principle is that you must not fool yourself and you are the easiest person to fool.” (第一の原則は、自分自身を騙してはいけないということだ。そして、自分こそが最も騙しやすい人間なのだ。) 物理学者リチャード・ファインマンの言葉。科学的態度の神髄を表しています。
似た意味の日本語のことわざ
- 「現実を直視する」 希望的観測を排して、実際の状況をありのままに見ること。
- 「臭いものに蓋(ふた)をするな」 都合の悪いことを隠して一時しのぎをするな、という意味の戒め。ラッセルの言う「ありのままを見る」ことの逆説的な表現です。
- 「正視(せいし)する」 物事を正面から見据えること。
バートランド・ラッセル(Bertrand Russell)の波乱万丈な生い立ち
バートランド・ラッセル(1872-1970)は、イギリスの哲学者、論理学者、数学者であり、社会批評家としても知られます。
- 名門貴族の孤独な天才 祖父はイギリス首相という名門貴族の家に生まれましたが、幼くして両親と死別。厳格な祖母のもとで孤独に育ちました。彼は幼少期から深い絶望感を抱えていましたが、「数学についてもっと知りたい」という強烈な知的欲求だけが、彼を自殺から引き留めたと自伝で語っています。
- 論理学の塔と平和への闘争 ケンブリッジ大学で学び、師であるホワイトヘッドと共に、数学の基礎を論理学に還元する大著『プリンキピア・マテマティカ』を完成させ、学問の世界で不動の地位を築きました。しかし、彼は象牙の塔に留まることはありませんでした。第一次世界大戦が始まると反戦運動を展開し、ケンブリッジ大学の職を追われ、半年間の投獄生活も送りました。
- 行動する哲学者 彼の関心は数学から、教育、性道徳、幸福論、核軍縮へと広がりました。常に権威に疑義を呈し、自由と平和を訴え続けました。1950年にはノーベル文学賞を受賞。90歳を超えてもなお、核兵器反対のデモに参加して座り込みを行い逮捕されるなど、最期まで理性を武器に世界と戦い続けた「行動する知性」でした。
名言の出典
エッセイ集『神秘主義と論理』(Mysticism and Logic, 1917)に収録されたエッセイ「自由人の信仰(A Free Man’s Worship)」や「科学の場所(The Place of Science in a Liberal Education)」などの思想を要約した言葉として広く知られています。
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心に響く英語ことわざ(891)米国独立に尽力したベンジャミン・フランクリンの名言 How few there are who have courage enough to own their faults, or resolution enough to mend them.(過ちて改めざる、これを過ちという)
https://www.eionken.co.jp/note/how-few-there-are-who-have-courage/
心に響く英語ことわざ(893)マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツの名言 Success today requires the agility and drive to constantly rethink, reinvigorate, react, and reinvent.(絶え間なき自己革新)
https://www.eionken.co.jp/note/success-today-requires-the-agility/
著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。

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