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公開日
2025.09.03
更新日
2025.09.03

心に響く英語ことわざ(623)社会契約論で有名なスイスの哲学者ジャン=ジャック・ルソーの名言 Virtue is a state of war, and to live in it we have always to combat with ourselves.(自己との闘い)
“Virtue is a state of war, and to live in it we have always to combat with ourselves.”
直訳は「美徳は戦争状態であり、その中に生きるためには、私たちは常に自分自身と戦わなければならない」で、似た意味のことわざに「為すべきを為す」があります。
ジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau)の名言 Virtue is a state of war…の意味
この言葉は、スイス生まれの哲学者、作家、政治思想家であるジャン=ジャック・ルソーが、「美徳(virtue)」という概念について述べたものです。彼は、美徳は、単なる善い行いではなく、自己の欲望や本能と絶えず戦う、内面的な闘争の結果であると説いています。
この言葉が意味すること
この名言は、「人間は矛盾した存在である」というルソーの人間観を反映しています。
- 「Virtue is a state of war」(美徳は戦争状態である) ルソーは、美徳を「戦争状態」という、激しい闘争にたとえています。この「戦争」は、外部の敵との戦いではなく、私たち自身の内面で起こるものです。彼は、人間は本能的に快楽や自己中心的な欲望を追求する傾向があると考えました。しかし、美徳を実践するためには、これらの本能的な衝動を克服し、理性的で道徳的な行動を選択しなければなりません。
- 「and to live in it we have always to combat with ourselves.」(その中に生きるためには、私たちは常に自分自身と戦わなければならない。) この部分は、美徳を保つことは、一時的な努力ではなく、絶え間ない自己との闘いであることを示しています。正直であろうとすること、他者に優しくすること、約束を守ることなど、一見簡単なことでも、状況によっては、自分の欲望や怠惰な心との戦いになります。
似た意味の英語のことわざ
- “He that is slow to anger is better than the mighty; and he that ruleth his spirit than he that taketh a city.” (怒るのが遅い者は、力ある者よりも優れており、自分の精神を支配する者は、都市を征服する者よりも優れている。) これは、聖書の一節で、他者を征服するよりも、自分自身をコントロールすることの重要性を説いており、ルソーの言葉と通じます。
- “To be a man is to be responsible for the self.” (人間であるとは、自分自身に責任を持つことである。) これは、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの言葉で、自己を律することの重要性を強調しています。
- “The only person you are destined to become is the person you decide to be.” (あなたになる運命にある唯一の人間は、あなた自身がなることを決意した人間だ。) ラルフ・ワルド・エマーソンの言葉で、自己の意志が、自分の人格や運命を決定するという思想を示しています。
似た意味の日本語のことわざ
- 「為すべきを為す」(なすべきをなす) 目先の利益や欲望を気にせず、自分がすべきだと信じる正しいことを行う、という意味。ルソーの言葉を的確に表す日本語です。
- 「君子危うきに近寄らず」(くんしあやうきにちかよらず) 賢い人は、危険な状況や誘惑には近づかないという意味で、自己を律することの重要性を説いています。
- 「意志あるところに道は開ける」 強い意志や決意があれば、必ず成功への道が見つかるという意味。
ジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau)の波乱万丈な生い立ち
ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778)は、スイスのジュネーブ生まれの哲学者、作家、政治思想家であり、フランス革命に大きな影響を与えました。彼は、「人間は生まれつき善良である」という性善説を唱え、自然に帰ることを主張しました。
幼少期と放浪の人生
1712年、ジュネーブで時計職人の家庭に生まれました。彼は、幼い頃に母を亡くし、孤独な少年時代を過ごしました。彼は、正規の学校教育をほとんど受けることなく、独学で様々な知識を身につけました。 彼は、その後、フランス各地を放浪し、様々な職業を転々としました。この時期の経験が、彼の後の思想に大きな影響を与えました。
啓蒙思想家たちとの交流と対立
彼は、パリでディドロやヴォルテールといった当時の啓蒙思想家たちと交流を深めました。しかし、ルソーは、彼らが主張する「理性の力」を過信する姿勢に疑問を抱き、次第に孤立するようになりました。彼は、理性が、人間を不自然で不幸な状態に導くと考えました。
『社会契約論』と『エミール』
ルソーは、『社会契約論』という著書で、「一般意志(general will)」という概念を提唱しました。これは、国家の権力は、国民全体の意志に基づかなければならないというもので、後の民主主義の基礎となりました。 また、彼は教育に関する著書『エミール』で、子供を自然のままに育て、理性を押し付けるのではなく、自主性を尊重すべきだと主張しました。この思想は、当時の教育観に大きな影響を与えました。
晩年と遺産
ルソーは、その急進的な思想ゆえに、多くの人々から批判され、迫害されました。彼は、孤独と精神的な苦悩の中で晩年を過ごしました。 1778年に亡くなりましたが、彼の死後、その思想は、フランス革命の精神的な支柱となりました。彼の言葉は、私たちに、人間は常に自己の内面と向き合い、自らの意志で道徳的な選択をしなければならないという、深い教訓を与え続けています。
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著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など26冊がある。
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