- 英語リスニングに強くなる!英音研公式ブログ / 205. 心に響く英語ことわざ
公開日
2025.04.02
更新日
2025.04.06

心に響く英語ことわざ(500)社会心理学者のエーリッヒ・フロムの名言 The task we must set for ourselves is not to feel secure, but to be able to tolerate insecurity.(困難の先に光あり)
“The task we must set for ourselves is not to feel secure, but to be able to tolerate insecurity.”
直訳は「私たちが自分自身に課すべき課題は、安全ではなく、不安に耐えることができるようにすることですある」で、似た意味のことわざに「困難の先に光あり」があります。
エーリッヒ・フロム(Erich Fromm)の名言 The task we must set for ourselves is not to feel secure, but to be able to tolerate insecurity.の意味
この言葉は、一見矛盾しているように思えます。なぜなら、人間は誰でも安心したい、安全な状態を望むからです。しかし、フロムは、安全を求めることばかりが、必ずしも幸福につながるとは限らないと主張しています。
安全の幻想:
フロムは、現代社会において、人は様々な不安から逃れようとし、安定した生活を求めがちだと指摘しています。しかし、そのような安全志向は、逆に新たな不安を生み出す可能性があると考えています。
成長のための不安:
不安は、決して心地よいものではありません。しかし、フロムは、不安は成長するための重要な要素であると捉えています。不安に直面し、それを乗り越えることで、人はより強くなり、自己実現へと近づけることができるというのです。
自由と責任:
安全な状態を求めることは、ある意味で自由を放棄することにつながる可能性があります。なぜなら、安全な状態にとどまるためには、変化を恐れ、新しいことに挑戦することを避ける必要があるからです。フロムは、真の自由とは、不安に立ち向かい、自らの人生を切り開いていくことにあると考えています。
名言の現代社会における意味
この名言は、現代社会においても、依然として重要な意味を持っています。
変化の激しい社会:
現代社会は、グローバル化やテクノロジーの発展によって、急速に変化しています。このような社会では、安定した状態を維持することはますます難しくなっており、不確実性が増しています。
自己実現:
人々は、物質的な豊かさだけでなく、自己実現や心の豊かさを求めるようになっています。しかし、自己実現は、必ずしも安定した状態の中で得られるものではありません。
ストレス社会:
現代社会は、ストレス社会とも呼ばれています。様々なストレスにさらされる中で、人は心の安定を求めがちですが、フロムは、ストレスを乗り越えることで、より強くなれると教えています。
まとめ
フロムの名言は、私たちに、安全を求めるだけでなく、不安と向き合い、成長していくことの大切さを伝えています。不安を恐れず、新しいことに挑戦し、自己実現に向かって進んでいくことが、より豊かな人生を送るための鍵と言えるでしょう。
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似た意味の英語のことわざ
No pain, no gain. (苦労なくして得るものなし)
不安や困難を乗り越えることで、成長や成功を得られることを意味します。フロムの名言が強調する「不安に耐える」という点と共通しています。
It is during our darkest moments that we must focus to see the light. (最も暗い瞬間こそ、光を見つけることに集中すべきだ)
苦しい状況でも、そこから学び、成長できる機会を見出すことができるという意味です。フロムの名言が示す、不安から立ち直る力強さを表しています。
Nothing ventured, nothing gained. (何もリスクを冒さなければ、何も得られない)
新しいことに挑戦するためには、リスクを伴うことを受け入れる必要があることを意味します。フロムの名言が強調する「安全ではなく、不安に耐える」という考えと共通しています。
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似た意味の日本語のことわざ
困難の先に光あり: 困難な状況を乗り越えれば、必ず明るい未来が待っている。
虎穴に入らずんば虎児を得ず: 危険な場所に足を踏み入れなければ、大きな成果を得ることはできない。
石の上にも三年: どんなことでも、長期間続けていれば、必ず成果が出る。
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エーリッヒ・フロムの生い立ち
エーリッヒ・フロムは、20世紀を代表する思想家の一人であり、精神分析学、社会心理学、哲学に大きな貢献を残しました。彼の思想は、現代社会における人間の心のあり方や、社会との関係性について深く考察しており、多くの人々に影響を与えています。
ユダヤ教の家庭に生まれ、激動の時代を生きる
生誕と家族: 1900年、ドイツ・フランクフルトで、裕福なユダヤ人の家庭に生まれました。彼の家は代々ラビ(ユダヤ教の宗教指導者)を輩出する家系で、幼少期からユダヤ教の教えを深く学びました。
第一次世界大戦と社会の変化: フロムが青年期を過ごした時代は、第一次世界大戦後のドイツであり、社会は大きな変動期を迎えていました。経済の混乱、ナチズムの台頭など、激動の時代を経験したことが、彼の思想形成に大きな影響を与えました。
学問への道と精神分析との出会い
学問への道: フランクフルト大学で哲学、心理学、社会学を学び、1922年に博士号を取得しました。その後、精神分析医として働き始め、フロイトの精神分析学を深く研究しました。
フロイトとの出会い: フロイトの精神分析学は、フロムの思想の基礎となりました。しかし、フロムはフロイトの理論を批判的に受け止め、社会的な要因が人間の心理に与える影響を重視する独自の理論を展開しました。
社会との関わりと思想の深化
フランクフルト学派との交流: フランクフルト学派のメンバーとして、マックス・ホルクハイマーやテオドール・アドルノらと交流し、社会批判的な思想を深めました。
アメリカへの移住: ナチスの台頭によりドイツを離れ、アメリカに移住。ニューヨーク大学などで教鞭をとり、多くの学生に影響を与えました。
主要な思想
フロムの思想は、以下の点が特徴として挙げられます。
人間は社会的な存在である: フロムは、人間は単独で存在できるのではなく、社会的な関係の中で生きている存在であると強調しました。
愛の重要性: フロムは、愛を人間の最も重要な欲求の一つと捉え、愛すること、愛されること、そして自己実現することの重要性を説きました。
自由からの逃走: 現代社会において、人は自由を恐れ、権威主義や全体主義に依存しがちであると指摘し、真の自由とは何かを問い続けました。
持つこととであること: 物質的な豊かさよりも、人間としての存在そのものを重視し、「持つこと」ではなく「であること」の重要性を説きました。
まとめ
エーリッヒ・フロムは、激動の時代を背景に、人間の本質や社会との関係性について深く探求し続けました。彼の思想は、現代社会においても、人間の心の問題や社会のあり方について考える上で、重要な示唆を与えてくれます。
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この記事もご覧ください。
心に響く英語ことわざ(499)現代経営学の父ピーター・ドラッカーの名言 Efficiency is doing things right; effectiveness is doing the right things.(目的は手段を正当化する)
https://www.eionken.co.jp/note/peter-ferdinand-drucker-d/
心に響く英語ことわざ(501)聖人マザー・テレサの名言 Be faithful in small things because it is in them that your strength lies.(塵も積もれば山となる)
https://www.eionken.co.jp/note/mother-teresa-d/
英語リスニング脳構築のポイント「単語ごとの英音認識」と「意味の理解」ができるようになる学習法
https://www.eionken.co.jp/note/listening-english-recognition-understanding/
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著者Profile
山下 長幸(やました ながゆき)
・英音研株式会社創業者・代表取締役
・米国系戦略コンサルティングファームであるボストン コンサルティング グループ(BCG東京オフィス)及びNTTデータ経営研究所において通算30年超のビジネスコンサルティング歴を持つ。BCGでは日本のみならず、米国・欧州企業向けに経営戦略、マーケティング戦略、業務改革(BPR)、新規事業や新サービス開発プロジェクト、ソーシャルメディアマーケティングなどを多数経験。NTTデータ経営研究所においては、グローバルビジネス推進センターのエクゼクティブコンサルタントとして、米国、中国、台湾、香港、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、バングラデシュ、UAE、サウジアラビアなどにおける市場調査・輸出拡大戦略立案などに従事。
・英語リスニング教育の専門家。長年、英語リスニング学習を実践・研究し、日本人に適した英語リスニング学習方法論を構築し、サービス提供のため英音研株式会社を創業。
・英語スピーキング脳を構築する効果的な学習方法も考案、英音研公式ブログに学習方法を投稿。
・趣味は米国の映画・ドラマを視聴して、米国人の価値観、文化、風習などを感じ取ること
・最近は、長年疑問に思っていたことや知りたいと思っていたことを生成AIに質問して、回答を読んで納得したりしている。これからの時代は膨大な知識データベースでもある生成AIへの質問力がポイントになると考えている。
・晴れていると、近くの小さな川沿いをウォーキングして、季節の移ろいを感じている。
・英語関連の著書に「生成AIをフル活用した大人の英語戦略」「英語リスニング学習にまつわるエトセトラ:学習法レビュー」「なぜ日本人は英語リスニングが苦手なのか?」など8冊がある。
Amazon.co.jp: 英音研株式会社: 本、バイオグラフィー、最新アップデート
・「シニアになって米国オンライン教育を受講してみた」シリーズとして9冊の書籍を発刊
「シニアになって米国の子供向け英語フォニックスのオンライン教育を受講してみた」
「シニアになって米国高校生向け米国史オンライン教育を受講してみた」
「シニアになって米国高校生向け化学オンライン教育を受講してみた」など
・ビジネスコンサルティング技術関連の著書に「ビジネスコンサルティング技術・マインド体系」「新規事業アイデア創造の技術」「ビジネスレポートを書く技術」「ビジネスプレゼンテーションの技術」など14冊がある。
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